ビジネス

2021.02.10

ベゾス退任、過去のテック界「政権交代」との決定的な違い

ジェフ・ベゾス(lev radin / Shutterstock.com)

テクノロジー業界ではこれまで、アマゾンほど周到に経営者交代を準備した企業はほとんどなかった。しかも退任するのは、史上最も成功した最高経営者(CEO)とも言えるジェフ・ベゾスだ。ベゾスは27年間で複数のビジネス帝国を築き上げ、しかもその全てを1990年代に自身が立てた戦略プランに基づいて実行した。

しかし過去の創業者兼CEO退任事例とは異なり、ベゾスはアマゾンの経営から完全に離れる予定はないようだ。移行するのは取締役会長で、単なる肩書のみの役職ではない。

創業者が数十年にわたり保持してきた企業トップの座から退くのは珍しいことではなく、マイクロソフトやグーグルでも行われてきたことだ。企業がここまで大きな成功を収めると、いずれは自分が作った会社が大きく様変わりし、その経営には超人的なレベルの献身と公的プレゼンスが必要になる。さらに、適切な経営に必要な細部への目配りへの関心は、時が経つにつれ大幅に低下していくものだ。

創業者の多くは経営者というよりも起業家としての心を保つものであり、自身の成功を楽しめるような仕事に打ち込む一方で、より野心的な新プロジェクトを立ち上げたいとも考えている。目的は利益の追求とは限らず、より崇高なものである場合が多い。

代表的な例が、マイクロソフトを退いたビル・ゲイツだ。彼は退任後も同社との良好な関係を維持したが、経営上の決定には一切関わらず、後任のスティーブ・バルマーに全てを任せた。この方針は、バルマーがマイクロソフトに多大なる損害を与え、彼が適任ではなかったことが明らかになっても変わらず、ゲイツが介入することはなかった。

ゲイツはマイクロソフトを完全に離れ、慈善活動に注力。立ち上げた財団の活動を通じて、人類にとって喫緊の課題の解決に貢献するという揺るぎない使命感を示してきた。

グーグルも同様で、共同創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジは、グーグルとアルファベットの経営をサンダー・ピチャイに委ね、会社を去った。2人はその後、稼いだ金を使い、さまざまな個人的プロジェクトに専念。大企業運営の日常業務よりも、自分がより情熱を傾けられるものの方を選んだ。
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編集=遠藤宗生

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