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2021.02.10

資金調達の回数より本質的なスタートアップの3つの「ステージ」


このステージではこれまでの姿勢や考え方を根本的に変える必要があるので、多くの創業者にとっておそらく最も難しく感じるステージとなるでしょう。最初は気心の知れた数人の仲間たちと立ち上げた小さなスタートアップでしたが、今となってはその面影もなく、プロダクトの開発に勤しんでいたはずが、もはや組織という巨大な「プロダクト」を育てることのほうがより大きな課題としてのしかかってくるのです。

ビジネス構築ステージから組織構築ステージへと移行する際に苦戦する企業には、共通した特徴があります。

特にわかりやすいのが、経営陣の力不足、つまり自分たちの頭で考えながら何十、何百人もの社員を管理する経営力が十分ではない場合です。そのような企業では、CEOが運営上の実務の細かい部分に気を取られすぎていて、より重要かつ影響度の高い戦略的意思決定のために十分にリソースを割いていない様子が伺えます。

また、取締役会で何度も同じ議題が上るのもよくある傾向で、これは上層部の考えと第一線で働く社員たちの行動との間に大きなズレが生じてしまっていることを示しています。

このステージを順調に進めることができず、つまずいてしまった場合、もはや大量の資金を注ぎ込んでも解決できない可能性が高いです。そもそもの組織としてのインフラが十分ではないため、その資金を有効活用することができないからです。まだ組み立てが終わっていないクルマにガソリンを入れるようなものです。

現実には、これらのステージは明確に分かれているわけではなく、ステージからステージへ移行する際には重なっている時期もあります。基本的には、プロダクト構築ステージがシードからプレシリーズA、ビジネス構築ステージがプレシリーズAからシリーズA、そして組織構築ステージがシリーズA、シリーズBおよびそれ以降のシリーズに該当すると考えてください。

しかし、最初にも述べましたが、企業間の差異の大きさを考慮すると、やはり上にリストアップした3つのステージの枠組みで考えた方が各スタートアップの状況をより正確に把握できるのではないかと個人的には思います。

1つ注意点として、スタートアップがプロダクト構築ステージからビジネス構築ステージへステップアップするからといって、プロダクト開発が止まるわけではない、ということがあります。同様に、組織構築ステージに進むからといってビジネスをもう育てなくてもいいわけではありません。どのステージであっても、ただその責任範囲が広がるだけで、「構築」は絶えず続けていくものなのです。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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