だが、若者になくておばさんやおばあさんにあるのは、経験と知恵である。それを活かし、他でもない若者を味方につけることによって、中高年チームにも光明が差し始める。
彼女たちのサポートをする2人の若者が、正反対なキャラクターなのもいい。一人目は、シェリルの甥で地味なインドア派のベン。イケイケの叔母に引き気味だったが、とあることを条件にダンスの音楽を担当し、次第に場に馴染み始める。
もう1人は、若者チアリーダーのキャプテン、クロエだ。可愛くて勉強もスポーツもできて学校では人気者の彼女が、なぜ仲間に内緒で中高年チームのコーチを引き受けたかには、やはりそれなりのわけがある。
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若者の力を借りるには、同情を引くのではなくバーター取引だというマーサたちのドライさが、却って爽やかな関係性を作り出している。
「鏡に自分を映して、いいところを挙げる」という、クロエの考案したメンタルトレーニングも、ルックスに関して自己否定的になりがちな中高年女性には参考になるかもしれない。1人ではあまりポジティヴになれなくても、集団で励まし合っていくと気分も上がってくるものだ。
男性はどちらかと言えば、人知れず努力し成果だけを見せたがる傾向があるようだが、女性、特におばさん年齢の人は、まず仲間をつくり互いを褒め合いながら伸びていくケースが多いのではないだろうか。
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だが、南部のコンテスト出場を目指し、当初とは見違えるように動きがきびきびしてくるチームを盛り上げながら、マーサには病の影が忍び寄る。
「年甲斐もなく」とされることへの挑戦と困難、中高年と若者の対立と交流、正反対の要素がぶつかり合い混じり合う中で、保守的だった周囲の空気が変わっていくところが小気味良い。「身のほどを忘れて限りある生をぎりぎりまで輝かせたい」という願いほど、人を動かすものはないだろう。
連載:シネマの女は最後に微笑む
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