老いても「わきまえない女」たち 平均年齢72才のチームで挑むチアリーディング


高齢者を含む中高年女性が、若い女性の競技であるチアリーディングに挑戦、というだけでさまざまな悲喜劇が想像される。しかし近年多くなった老人が主人公の多くの映画では、平凡な老人らしさを押し付けられるのを嫌い、一見無謀とも思える新たな課題に取り組む姿を描いたものが少なくない。

この連載でも少し前に、老女が登山に挑戦する『はじめての山登り』を紹介したが、若い頃目指したことに年老いて再挑戦し、数々の困難を乗り越えていくストーリーは、人を勇気づけるものだ。「~らしさ」に囚われずに自由に主体的に生きたいという思いに、年齢は関係ないということだろう。

チアリーディング・クラブの申請が顰蹙を買い自治会で却下された後、マーサたちは秘密裏にメンバーを募集。応募してきた個性豊かな中高年女性たちが、思い思いにダンスやヨガやエアロビクスを披露して自己PRする場面が楽しい。

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(c)2019 POMS PICTURES LLC All Rights Reserved

しかしマーサの指導で実際に練習を始めてみると、腕が上がらなかったり、腰痛を抱えていたりで、最初から年齢の大きな壁に阻まれる。

当然、周囲の目も冷淡だ。夫がどうしても許可してくれない人や、息子に家に軟禁される人。老いた女性が主体性に行動することを認めず、旧態依然としたポジションに縛り付けておきたい人々の、さまざまな振る舞いが描かれる。

そこで投げつけられる「ミニスカの老女を誰が見たいか」という言葉は、男性だけでなく、女性の多くも深く内面化している「わきまえろ」感覚だろう。ジェンダーとエイジズムの壁を乗り越えるのは容易なことではない。

若者になくて、彼女たちにあるもの


基礎体力作りから始めてトレーニングを重ねるマーサたちは、内緒で講堂を使っていたのが発覚し、練習場所を求めて隣町のハイスクールへ。女子チームの壮行会が行われているのに紛れ込み、少女たちのまるでサーカス団のようなハイレベルの演技の後、練習の成果を披露してみたものの惨憺たる結果。

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ここで観客とともにマーサたちを嘲笑うハイスクールのチアリーダーの若さゆえの残酷さには、身に覚えのある人もいるのではないだろうか。誰だって、自分が老いることを具体的には想像できない。老いた時、まだ若者に混じって挑戦したいことがあるかもしれない……など、更に想像できない。
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文=大野 左紀子

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