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シネマの女は最後に微笑む

ダイアン・キートン演じるマーサ(写真中央)を中心に、チアリーディングに挑戦する女性たちが描かれる(c)2019 POMS PICTURES LLC All Rights Reserved

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長がとうとう辞任という事態になった。この10日余りの波紋はネット上でも大きく、「#わきまえない女」がTwitterトレンド1位になるほどの広がりを見せていた。

「わきまえろ」という言葉が発せられる時、そこに省略されているのは「身のほどを」である。相手の言動がその「身のほど」(立場や年齢)に相応しいか否かを、その言葉で一方的に決定するのは、もちろん権力者だ。

しかしこれは、自らを縛る呪いの言葉にもなりうる。自分の立場や年齢でこんなことをしたら、「わきまえていない」と笑われるのではないかという不安。それに一番縛られがちなのはおそらく、年齢を重ねた一般女性ではないだろうか。

というわけで今回は、老人だけの町を舞台に「わきまえない女」たちのある活動が周囲に波紋を広げてゆくさまを、涙と笑いで描いたコメディ『チア・アップ!』(ザラ・ヘイズ監督、2019)を取り上げよう。

中高年女性たちがチアチームを結成


がんで闘病していた老母が亡くなり、遺品整理を済ませたマーサ(ダイアン・キートン)は、46年住んだニューヨークのアパートからジョージア州のとあるシニアタウンに越してくる。55歳以上の中高年ばかりが暮らすこの町は、小綺麗な老人向け住宅が並ぶ中にテニスコートやプールや公園があり、住民でつくる自治会や警備本部が設置され、人々はさまざまなクラブに所属している。移動は車ではなくスピードの出ない電動カート。何もかも完備された老人向け保養地といった趣だ。

1人きりの静かな老後を満喫しようと思っていたマーサに近づいてくるのは、賑やかな隣人シェリル(ジャッキー・ウィーヴァー)。夜は仲間を集めて酒を飲みながらポーカーに興じる、いかにも現役感を漂わせた彼女は当初少々疎ましい存在だが、マーサが忘れようとしていた青春を発掘する。それは大昔、チアリーダーだったマーサが、デビュー戦の前日に母のがんが発覚して大会を欠席したという苦い思い出だ。

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(c)2019 POMS PICTURES LLC All Rights Reserved

好奇心旺盛でノリのいいシェリルに刺激され、マーサはこの町でチアリーディングのクラブを作ることを思い立つ。

チアリーダーとはアメフトなどのスポーツの応援を先導(lead)するチームのことで、音楽に合わせた躍動的でアクロバティックなダンスそれ自体がスポーツ競技として認定され、世界中で大会が開かれている。作品タイトル"Cheer up!"(元気を出して)も、チアリーダーと掛けられているのだ。

文=大野 左紀子

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