1カ月半でPCR18回。ハンドボール彗星ジャパンの「バブル缶詰遠征」記

ウイルス対策とも戦い続けた彗星ジャパン。その快進撃は、初戦のクロアチア戦から始まった


そんな試合に対する集中力が弱まりそうな環境の中ではあったが、日本代表「彗星ジャパン」はシグルドソン監督が就任してから4年弱、じっくりと、しかし確実に進めてきた強化の成果を見せる。
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予選ラウンド初戦で、過去にオリンピックや世界選手権の優勝経験があり、2020年のヨーロッパ選手権で2位というエリート国クロアチアを相手に、29対29で引き分け世界のハンドボール界にインパクトを与えると、続く2戦目で、今大会ベスト8進出を果たし、前年のアジア選手権では大差をつけられて敗れている、アジアチャンピオンのカタールを、29対31とあと一歩まで追い詰め惜敗。

絶対に負けられない3戦目の相手は、高い身体能力を有し、近年メキメキと頭角を現しているアフリカの新興勢力のアンゴラ。前回大会で敗れた相手に30対29と1点差で勝利し、24年ぶりのメインラウンド進出を果たした。

メインラウンド進出を決めた我々は再びカイロへと戻ることになった。しかし、今度の滞在先はエジプト到着後に滞在していたホテルとは違うため、再び新しい環境への順応が求められる。
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チーム係のエジプト人は、「カイロで一番のホテル。このホテルに泊まりたいので、何としてもメインラウンド進出を決めてくれ」と話していたので、期待を抱いてたどり着いたホテルは、都市部にある大型ホテル。元宮殿であったという部分がホテルの敷地内にあるものの、今までのリゾート型とは違う高層ホテル。PCR検査場が12階にあるので、エレベーターを使わないなど独自の感染対策へ、新たな対応が必要となった。

メインラウンドで対戦する相手は全て東京オリンピックへの出場権を獲得している国々。これまで以上に準備を整えて試合に挑まなければならないが、参加32カ国中16カ国が「同一ホテル」に滞在するとあって、割り当てられた練習会場はとても世界選手権レベルとは思えない施設であったり、トレーニングジムも各国ごとの使用、消毒を繰り返すため、現実的な時間を割り振られることはほとんど無いなど、調整環境にも苦しむことになった。



そうして迎えたメインラウンド初戦のアルゼンチン戦は、中1日で様々な対応を迫られた影響もあって、全体的に動きが悪く28対24と敗れてしまい、ベスト8進出の可能性がほぼ消滅。

しかし続くデンマーク戦では、リオオリンピック金メダルで、今大会でも優勝して世界選手権2連覇を果たした名実ともに現最強チームを相手に、ベンチ入りの選手を大きく入れ替え、出場時間を選手全員でわけながら前半を17対19と善戦。切れかけた大会への集中力を取り戻す精神面の成長と厚くなりつつあるチームの選手層を証明した。
次ページ > 最後のバーレーン戦を前に、試合とは別のところで問題が起きる。

文、写真=田口有史 編集=宇藤智子

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