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コート上の戦いぶりとは裏腹に、エジプト人気質に、オフコートでは最後まで苦戦した。

ベスト8入りが消滅し、次のバーレーン戦が最終試合となった。その翌日には帰国するため、準備を進めると、飛行機に搭乗するにあたって、72時間以内のPCR検査の陰性証明が必要にも関わらず、用意できていないことが判明。1週間以上前からドクターを中心にチーム係を通して大会組織委員会にお願いしていたにも関わらず、チーム係、エジプト人のコロナ対策ドクター、大会組織委員会、みんなが「聞いていない」の一点張り。

帯同している沖本ドクターが目の前の試合のために選手の体調管理や痛み止めの注射を打ちながら、吉村戦術アナリストとともに試合会場出発30分前まで尽力して、何とか陰性証明書を入手する手はずを整えた。試合への影響が無いように気を使いながらの献身に応えるように、選手たちも前半から積極的にプレー。この大会一番の出来かと思えるような展開で、相手に主導権を渡すことのないまま29対25で勝利。有終の美を飾った。

日本での合宿期間から数えるとバブル内での生活は1カ月半! 現地でのPCR検査は鼻と喉から検体を採取する鼻咽頭式で行われ、大会が始まってからはほぼ毎日、18回にも及んだ。

最後に滞在したホテルでは、散歩をするなどの気分転換すらも難しい中、集中力を切らさず、逆に選手間でのコミュニケーションを頻繁に取ることにより、これまでの強化の成果を見せて、2勝1分3敗という結果を残した。

最終順位は19位だが、監督の母国でもありオリンピックで銀メダルを獲得したこともあるヨーロッパの伝統国アイスランドの順位を一つ上回った。そしてあと一歩まで追い詰めたカタール、大会前のテストマッチとはいえ接戦を演じた開催国エジプトがベスト8という結果からも、7、9位から20位くらいまでは紙一重と言えるだろう。今大会で、そのグループの中に入ったことは、東京オリンピックのベスト8進出に向けての手ごたえを感じさせた。


メインラウンド最終戦、対バーレーン戦を終えた隼ジャパン。IOCも注目し過酷を強いる事となったコロナ禍の国際大会で、彼らは歴史的躍進を見せてくれた。

帰国にあたって、出発時にはアスリートトラック適用の予定もあったが、緊急事態宣言の発令に伴い、不適用。成田空港からバスで名古屋へ寄って大阪で1泊、広島、福岡へと向かい、さらにそこから佐賀、宮崎へ帰る選手とスタッフもいて、全員が帰宅するまで2日掛かり。帰国後2週間の自主待機となったが、30人の選手・スタッフ全員が自主待機期間中に受けた3度のPCR検査も陰性で終えて、約2カ月に渡るバブル内生活を無事に乗り切った。

今後日本リーグに所属している選手たちはチームに合流して、プレーオフ、またプレーオフでの優勝を目指して戦い、その後再び、東京オリンピックに向けた合宿生活に入る。

過酷な環境の中でも成果を残して、精神的にも成長したハンドボール男子日本代表「彗星ジャパン」のこれからにも注目して頂きたい。



田口有史(たぐち ゆきひと)◎1973年静岡県生まれ、福島県育ち。県立福島高校卒業後、進学のため上京。1993年に渡米しサンフランシスコ芸術大学に編入。在学中からフリーランスとして活動を始め、現在は東京に居を構えつつも、年間150日程度渡米。メジャーリーグを中心にバスケットボールやフィギュアスケート、ハンドボール、サッカーなど世界中の様々なスポーツを撮影。MLB日本開幕戦及びWBC公式フォトグラファー。2019ハンドボール女子世界選手権公式フォトグラファー。 今回のハンドボール男子世界選手権では写真撮影のみならず、チーム広報としてエジプトへ帯同した。

文、写真=田口有史 編集=宇藤智子

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