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2021.03.21 10:00

若く未来あるAYA世代のがん患者を救うのは、耳慣れた励ましではない

AYA世代の認知と理解のために幅広い領域から有識者が集結した「World Cancer Week 2021」

AYA世代の認知と理解のために幅広い領域から有識者が集結した「World Cancer Week 2021」

がんの情報や経験を共有し、がんと関わりながら生きていくことをテーマとするCancerXが「World Cancer Week 2021」を開催した。2月4日のWorld Cancer Day(世界対がんデー)に合わせた、61のプログラムカテゴリー、130人のスピーカーによるオンラインイベントを、6日にわたりセッションを展開した。

今年はForbes JAPANもモデレーターとしていくつかのセッションに協力。その中でも、オーディエンスが200人を超える規模にまでなった「AYA世代の認知と現状をもっと知ってもらう」では、鋭い視点を持つ有識者を招き1時間半にわたり議論が尽くされた。ここにその内容の一部を紹介する。


がんに関する国内の認知は一向に進んでいない。CancerXの調査によると、日本人のがん罹患率が「2人に1人」、がん死亡率が「3人に1人」であることの認知は、それぞれ33.6%(罹患率)、21.2%(死亡率)と低い。そして、それ以上に知られていないのが「AYA世代」のがんだ。

Adolescent and Young Adultを略しての「AYA」。思春期・若年成人として、15歳から39歳が該当する。小児がん、成人がんの両方のがんの種類の発症が考えられる世代であり、なにより彼らは、就学、受験、就職、結婚といったライフイベントを多く経験する世代でもある。多感で活動的、未来があるこの世代にがんというファクターがのしかかることで、AYA世代のがん経験者は「生きづらい」状況にある。

ここに紹介するセッションは、医療従事者も知らないこともあるAYAという言葉を知ってもらい、そしてAYA世代のがん経験者のことを理解するための方法を探るものだ。

AYA世代とがん ─わたしたちができること─


本セッションには、AYA世代の認知という広い視座にあるため、各方面の有識者が参加した。

・清水 千佳子(国立国際医療研究センター病院 がん総合診療センター 副センター長)
・北野 唯我(実業家・作家)
・辻 愛沙子(arca CEO/クリエイティブディレクター)
・友寄 蓮(タレント)

がん全体を俯瞰すると、毎年新たにがんと診断されるのは全年齢で約100万人(2017年時点)、その中でAYA世代は約2万人で、その数自体が多くないからこそ実態が知られにくいと、清水千佳子は指摘する。

「まず、AYA世代の患者さんに出会うことが多くない。診断されて戸惑う患者さんとともに、我々医療従事者も不慣れな部分もあり、把握しづらい面があります。また、AYAのがんは非常に種類が多く、白血病、リンパ腫、神経芽腫という子どもに多いがんに加えて、骨肉腫とか軟部肉腫など聞き慣れないもの多いのです。胃がんや大腸がんなどいわゆる“5大がん”と言われる大人のがんの人数に埋もれがちになるのです」(清水)

状況が見えにくいからこそ、「おいてけぼり」になりがちな現実。AYA世代は知られにくく、隔絶感を抱きやすい状況にあるのだ。清水は医療従事者として当事者側で感じる思いを示した。

「死を意識せざるを得ないこちら側と、人生に夢や希望があるあちら側。どうしてもこの境界を感じずにはいられないのです」(清水)
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文=上沼祐樹 編集=坂元耕二

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