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2021.02.09

【独自】世界最大の暗号資産取引所が25歳の日本人へ初出資 ウェブの民主主義革命は起こるのか

写真=曽川拓哉


世界のトッププレイヤーとつながる方法


その後、日本で大学を卒業すべく帰国。東京大学大学院ブロックチェーンイノベーション寄付講座共同研究員を経て、ステイクテクノロジーズを創業。わずか2年の間に、ポルカドットのテストネットに世界初となる接続に成功。世界最大手の1つであるWeb3財団より最多の助成金も獲得。渡辺は着実にグローバルで戦う起業家として前に進んでいた。

彼が短期間でここまで成果をあげられたのには理由がある。

「ブロックチェーンに限った話ではありませんが、人と人との関係づくりを大切にしています。コロナ禍の前はスイス、ドイツ、中国など世界を飛び回りながらキーパーソンに直接会いに行きました。もちろんオンライン上で会話することも可能ですが、対面して誠意を見せることで信頼関係も築かれていくのです」

そしてもう1つ関係づくりで重要なことは「ビジョン」だという。渡辺が実現しようとしているオープンソースの活動は、当時短期的な儲けは見込まれなかった。それでもこの活動を続ける理由は何か。この活動によってどんな世界を目指すのか。それらのビジョンを業界の中心人物たちに真摯に語ることで、彼らもその思いや世界観に共感してくれるのだという。

渡辺は、そんな地道で「ウェット」なコミュニケーションを用いて、第一線で戦う準備を進めてきたのだ。

「日本の外へ出て、第一線の世界に触れよう」


では、どうしたら渡辺のように高い視座を持つことができるのか。新型コロナウイルスにより、ますます世界が閉ざされていくなかで、彼はこう考えたという。

「AIでもブロックチェーンでもなんでもいいです。自分の決めた道の第一線で活躍している人たちと会うことが大事です。もちろんコロナで直接会いづらい状況が続いていますが、今はオンラインでもつながることができます。クラブハウスでは、イーロン・マスクが喋っているルームがある。第一線の人たちとの接点を増やすことで自然と目線は高くなるでしょう」

少子高齢化が進み、日本の経済成長は鈍化している。いままでと同じやり方が通用しない時代が来ている。

「本当はこの国に対してたくさん言いたいことはあります。でも、僕は起業家だから文句ばっかり言っても格好悪い。文句を言うくらいなら、起業家としてグローバルの舞台で勝負して勝ちにいきます」

今回の資金調達には、手続きも含めておおよそ半年かかっている。初めてのことだらけだったからだ。しかし、彼の切り拓いてきた道によって、日本の後に続く起業家たちは、それよりも少ない時間でビジネスができるようになるだろう。

最後に少し意地悪な質問をしてみた。「お金儲けに興味はないのか?」と聞くと、即座に答えが返ってきた。

「もちろんありますよ。興味がない人は少ないんじゃないですか。でも、高級車を買ったり、高額な時計を買ったりすることにあまり関心はないです。そのお金を使って、大学のときに目の当たりにした格差や環境問題を解決していきたいです」

文=井土亜梨沙、写真=曽川拓哉

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