3.「街」のように
ヘルツリーヤでマイクロソフトは「従来の一般的なグリッド型やオープンフロア型のオフィスを越え、都市環境のダイナミックな独創性を刺激」したかったとのことです。近年、従業員同士の偶然の出会いを促したり、業務のサイロ化を減らしたりしたいと考える企業が増えていますが、マイクロソフトの狙いもそのトレンドを反映しています。
新型コロナウイルスが猛威を振るう現状では、ダイナミックな独創性よりも安全性を優先するのが現実的かもしれません。しかし、マイクロソフトは長期的な視点に立って、オフィスの存在意義を捉え直しました。
「街とは人びとが交流する場所です」とギンディ氏は語ります。「私たちの周りにはたくさんの人がいて、活動があり、文化がある。人はひとりではなく、もっと大きな何かの一部です。オフィスも、ただ仕事をこなす場所ではなく、ひとつのライフスタイルを実践する場所なのです」。
新オフィスにはプレイルームも。子どもを持つ従業員もワークライフバランスを維持しやすい。(イメージ: Microsoft)
「街」をコンセプトにした新オフィスには、まず、チーム活動の拠点となる「居住地区」があります。これに加えて、商業地区を模した「ダウンタウン」、レクリエーションがそろった「ミッドタウン」、自然あふれる屋外エリアの「ガーデン」、ブティックホテルのような雰囲気の「アップタウン」の4つの主要エリアで構成されています。これらのエリアはすべて「大通り」でつながっています。
祈祷室、音楽室、ジム、ヨガルームも用意されており、利用できるアクティビティにも同じコンセプトが反映されています。また、子ども用のプレイルームも設置されています。在宅勤務を経験してテレワークがいかに子育てしやすいかを知った、子どもを持つ従業員に対して、オフィス勤務という選択肢を再考してもらう効果が期待できそうです。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』によると、一部の企業では家庭向けの福利厚生が新型コロナウイルス感染症のパンデミックという難局を乗り越えるのに貢献したとのことです。
従業員がリラックスできる環境にしたい。それが、新オフィスの設計を手がけた建築家の願いです。(イメージ: Microsoft)
パンデミックがもたらした「働くこと」そのものへの課題の解決に企業は取り組んでいますが、オフィス勤務の再開はいつかきっとできること、そして、楽しささえ感じられるものになるかもしれないという、希望の光が見えてきました。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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