セラミックアーティスト・桑田卓郎が作品に込めたメッセージ

installation view from Day After Day at Otowa-san Kiyomizu-dera Temple, 2019(c)Takuro Kuwata, photo by Yasushi Ichikawa

installation view from Day After Day at Otowa-san Kiyomizu-dera Temple, 2019(c)Takuro Kuwata, photo by Yasushi Ichikawa

日本には、国内だけではなく、世界を舞台に活躍をするアーティストも多く存在する。

連載5回目の今回は、起業家、コレクターとして活躍するユリ・ユリーカが、セラミックアーティストの桑田卓郎に、2019年のロエベとのコラボレーションや、彼が作品を通して伝えたいメッセージを聞いた。


──まず初めに、桑田さんがアーティストになった経緯を教えてください。もともとセラミックという分野を目指していたのでしょうか。

幼い頃、自分が生を受けた意味や自意識について考えることがあり、その度に怖くなり、母親に「死んだらこの意識はどこに行くの?」と聞いていたことを思い出します。

後に、どうせなら自分がこの時代に生きていた証として残る様なことがしたいと思うようになりました。小学生の頃から絵を描くこと、図画工作に夢中になっていたこともあり、大学は美術方面へ進学しました。

セラミックアーティストになったきっかけは、大学で陶芸を専攻したことです。大学卒業後も専門的な知識や技術を求め、陶芸家の財満進氏に弟子入りをしました。2007年に多治見市陶磁器意匠研究所を修了し、独立しました。

──作品制作時には、どのような気持ちを抱いているのでしょうか? ご自身の制作意欲に突き動かされて、または、誰かに見せたいという気持ちで作品制作をしていますか?

自分に素直になって、感じたままを作品にしたいと思っています。

自身の表現の形として作品を作っていますが、誰かのために作品を作ることもあります。人とコミュニケーションをとるなかで、新しい価値観を知り、自分ひとりでは創造することの出来なかった作品ができることにも、喜びを感じています。

──作品制作の過程を教えてください。1つの作品を作るのにどれくらいの時間がかかっているのでしょうか。

まず、陶磁器のプロセスや素材との対話があります。その対話の中からインスピレーションを得て、制作を進めていきます。

一度制作を始めたら、普段から自分の目につくところに作品を置き、日々、色や釉薬、焼成方法を考え、方向性が決まったものから焼成し完成を目指します。

順調に制作が進み、数カ月で完成する作品もあれば、制作が途中で止まってしまい、1年や2年制作がストップしてしまうものもあります。

──ご自身のアートのスタイルをどのように定義しますか? また、作品にはどのようなメッセージを込めているのでしょうか。

私の作品を一言で定義するならば、セラミック制作のプロセスを用いた彫刻表現、でしょうか。

様々なことが便利になった現代では、自分を含め、人間の動物としての機能が退化していることを感じています。だからこそ、作品は画像や映像だけではなく、生で見てもらいたいと思っています。実際に見て、何かを感じ、ものの違いに気づく。そうした本質を見抜く力が多くの人に必要とされているのではないでしょうか。

──何年にもわたり作品制作を通じて実践してきたことは、どのように変化、進化してきましたか? そして、今後はどこを目指すのでしょうか。

伝統的な手法や思考、素材や制作プロセスを重んじながら、私なりに咀嚼して作品を制作してきました。

これまで国内外の様々の場所で作品を展示してきましたが、それぞれ価値観の異なる環境で展示することで、作品自体も変化、進化してきたように感じています。予想もしていませんでしたが、そのサイクルのなかで、新しい作品が生まれたことにも喜びを感じています。
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取材・文=ユリ・ユリーカ・ヤスダ 構成=守屋美佳

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