同社は20年10月、香港の資産運用会社プレイアド・インベストメント・パートナーズらが共同設立したミネルバ・グロース・パートナーズ、世界最大規模のVCであるセコイア・キャピタルが中国で設立したセコイア・キャピタル・チャイナなどから約60億円の資金調達を行い、大きな注目を集めた。バーティカル(業界特化型)クラウドの雄は、コロナ禍の一年をどう振り返るのか。
「コロナ禍で影響は出たが、計画通りに盤石な成長ができた。ただ、契約社数2500社、利用社数6万社、ユーザー17万人と成長を続けている中で、『コロナ禍で、僕らが顧客にできることはもっとあったのではないか』と経営陣とともに話をしている」
アンドパッド代表取締役の稲田武夫はコロナ禍の一年について振り返る。同社は、現場の効率化から経営改善までを一元管理できる、クラウド型建設プロジェクト管理サービスを展開している、業界シェアナンバー1企業だ。同社は2014年創業、「幸せを築く人を、幸せに。」というミッションを掲げ、建設・建築業界の人手不足解決、働き方改革を加速させる、インダストリークラウド企業である。
アンドパッドが展開する「ANDPAD」は、社内タスク管理、写真・資料管理、日報、工程表、横断工程表、チャット、営業管理、施主共有、カレンダー、検査、受発注の機能を持つプラットフォームだ。
「建設領域では、20年3月。住設業界では一部の設備納入が止まりはじめ、大手ゼネコン、ハウスメーカーの工事が止まったことを皮切りに、中小企業の顧客もコロナ対応に追われていた。我々は、資金調達時期を早めて、組織の人員を拡大して、各地場エリアで顧客対応する体制をいち早く作るという意思決定をした。
また、コロナ禍で、ANDPADは、現場の元請けと職人を繋ぐホットラインにもなった。顧客の中には、ANDPADで、体温の報告をした企業もあった。SaaSの枠組みを超えた、経営の支援ができないか。そして、より業界に貢献できないか、ということを考えたのがコロナ禍の出来事だった」(稲田)
同社は20年7月、建設業界特化のソリューション・サービスとの連携、建築業界にこれから貢献するテクノロジーとの連携及び共同研究を行う「ANDPADアライアンス」を開始。初期のパートナーサービスには、電子署名サービスのクラウドサイン、セールスフォースなどが並んだ。
また、21年には、新規事業研究開発組織である「ANDPAD ZERO」を立ち上げ、3次元の設計図である「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング」、「データ解析」、「IoT」をキーワードに事業やプロダクト開発を行う。その一環で、慶應義塾大学SFC研究所の小林博人研究室と共同研究を開始する。
「特定の業務がラクになるツール提供ではなく、人、建材、商取引の流れを見える化するのが我々のプラットフォームの価値。建設企業向けに業務の流れの整理から、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)的に経営支援することも増えている。
また、これまでは住宅建築が注力領域だったが、20年には、商業建築、ビル、アパート、専門工事といった非住宅建築にも顧客層が広がった。建設・建築業界全体をDX(デジタルトランスフォーメーション)化する企業を目指していく」(稲田)