ビジネス

2021.02.08

世界有数の投資家も注目 アンドパッドが描く「インダストリークラウドの未来」

アンドパッド代表取締役 稲田武夫


また、同社は20年4月、取締役CFO(最高財務責任者)に、ミクシィを大きく事業成長させた荻野泰弘が参画。21年1月には、上級執行役員CMOに、ローソンやファミリーマートなどの企業変革に取り組み、DXに関する豊富な知見や経験がある植野大輔も参画。執行役員の多くが20年以降に参画するなど、経営強化を行い、さらなる成長への布石を打ってきた。

さらに、同社は20年7月と10月、香港の資産運用会社プレイアド・インベストメント・パートナーズらが共同設立したミネルバ・グロース・パートナーズ、セコイア・キャピタルが中国で設立したセコイア・キャピタル・チャイナ、既存投資家であるグロービス・キャピタル・パートナーズ、DNXベンチャーズ、セールスフォース・ベンチャーズ、BEENEXTから約60億円の資金調達を行った。

「僕が思うプラットフォームのあるべき姿は、新規加入者がいると既存参加者に利があるという世界。メカニズムとしてのプラットフォームであり、誰かが加わった時に、誰かが嬉しいという状態を作らないといけない。アーリーアダプターのニーズに応えたサービスを追求することは、新規顧客にとっても嬉しい。新規顧客が増え、顧客層が多面的になれば、職人の利用率が増えるので、既存顧客も嬉しいという価値循環が起きる。

このよりよい価値循環こそが我々の『Moat(掘)』。60億円の資金調達は、新規顧客獲得のためではなく、既存顧客をエンゲージメントし続けるため。顧客がアンドパッドに期待しているのは、現場のニーズをいち早くプロダクトにすること。200人近くの営業が毎日顧客と接点を持ち、ニーズを拾ってくる。200人が意思を持って動くからこそ他のプレイヤーより強い」

50兆円規模の市場、業者数約50万社、従業員約500万人いる巨大なある建設業界のなかで、盤石な成長、事業・組織構築、経営陣、ファイナンスを行うアンドパッドだが、稲田が見据える先はさらに長く、構想はより大きい。インダストリークラウドというバーティカルSaaSの成功事例は世界的に見ても少ない。だからこそ、足元の実績は着実にSaaS事業で構築する一方、経営陣はSaaSのセオリーにとらわれないでやっていくという。

「今後は、施工管理からリソース管理、原価管理、経営管理へとプロダクトの幅を広げ、さらに、経営支援、データベースを活用したサービスも視野に入れている。SaaS事業だけにとらわれず、顧客のために何ができるか、という視点で考えている。僕らコンストラクション(建設)テックは、産業に寄り添って、産業に立脚しているからこそ、長期的な目線で、業界のDXに関わる責任がある。

長く続けること、すごくいいプロダクトを出し続けることがKFS(重要成功要因)となる。10年、20年、長く、深く、保つ企業づくりをする経営を考えている。また、すごくいいプロダクトを出し続けるには、本当に優れた開発組織が生き生きと、かつ、拡大できる経営ができるか、ということも重要だ。20年先から見た2020年という視点で考えたら、いま成長しなければ、いつ成長するんだ、と。むしろいまのレベルの成長では低いと思っています」


稲田武夫◎アンドパッド代表取締役。同社は2014年4月創業。建築・建設業向け施工管理アプリ「ANDPAD」を展開。資本金12億8893万円(資本準備金含む)。世界的VCのセコイア・キャピタルなどからの累計調達額は約87億円。237名(2021年1月1日時点)

文=山本智之 写真=帆足宗弘(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

    ForbesBrandVoice

    人気記事