近年、プラごみが海洋汚染や気候変動、生物や人体に及ぼす影響などが問題視されている。国連環境計画(UNEP)が2018年に出した報告書によると、日本における国民1人当たりのプラスチック包装廃棄物の発生量は、アメリカに次いで2番目に多い。
さらに、コロナ禍で家庭から出るプラごみの量が急増しているとの声が聞かれる。私も実感していたが、東京都環境局は、「自宅で飲食する機会が多くなり、テイクアウトの容器、びん、缶などを中心に家庭ごみが増加している」と警鐘を鳴らす。プラごみに溢れた暮らし。これが「ニューノーマル」だとしたら、あまりにも悲しい。
そんなことを思っていた矢先、ある商品が手元に届いた。シリコン製のパッキン以外はすべて天然素材でできた「土に還る弁当箱」、BENTO box COFFEEだ。
竹の粉とコーヒーのかすを原材料に用いた弁当箱、BENTO box COFFEE。2021年1月末からオンライン販売を開始した
プラごみ対策で日本より先を行く台湾
「プラごみの話から、なぜ弁当箱?」そう疑問に思う人もいるだろう。かくいう私も、これまで手作り弁当と社会課題を結びつけて考えたことはほとんどなかった。だが、BENTO box COFFEEの開発リーダーを務めた料理研究家・野上優佳子氏の次のような話を聞いて、認識が変わった。
「そもそも、家庭でつくるお弁当って同じ容器を使い回しますよね。実はそれ自体がエコフレンドリーな行為です。さらに、夕食の残り物などもお弁当箱に詰めるだけで『次の食事』としてリフレーミングされる。食べ物を最後まで楽しくいただくことで、食品ロスを減らすことにもつながります」
しかし、数多くの弁当レシピ本やワークショップを手掛けてきた「弁当マニア」の野上氏は、これだけでは満足できなかった。300個以上の弁当箱を使い回す日々のなかで、「弁当箱そのものもエコフレンドリーにできないか」と考え始めたというのである。
「手放す際にも、環境に負荷がかからないお弁当箱ができれば、いまよりもっと『お弁当は素晴らしい日本文化だ』と胸を張って言える」(野上氏)
そんな思いを原動力に、弁当箱に使える素材を探し求めるなかで出会ったのが台湾のホームウェアブランド「TZULAI(ツゥーライ)」だった。2013年創業の同社は、竹から取り出した繊維を用いた生活雑貨の企画を得意としている。
台湾の伝統文化に着想を得た商品を数多く展開する台湾のブランド、ツゥーライの食器
台湾は、プラごみ対策で日本より先を行く国の1つだ。2002年7月から「プラスチック製レジ袋およびプラスチック類使い捨て食器使用制限政策」を推進し、プラ製のレジ袋や使い捨てプラ製食器の使用を規制してきた。台湾の行政院環境保護署によると、2030年にはプラ製レジ袋はもちろん、使い捨てのプラ製食器やコップ、ストローの使用なども全面禁止にするという。