I study technology disruption in individuals, companies and societies.

アレクセイ・ナワリヌイ / Getty Images

昨年、毒殺未遂の被害にあったロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイが帰国と同時に身柄を拘束されたことを受け、同国では近年で最大規模の抗議活動が行われている。

警察は新型コロナウイルス対策の規則を破ったとの口実でデモ隊を抑圧。深刻な基本的人権侵害や脅迫も起きている。だがこうしたデモ抑圧の試みは、ロシア政府によるインターネット規制の試みと同様、ほとんど効果が出ていない。

政治プロセスを組織的に操ることでロシアの実権を20年以上握ってきたポピュリストであるウラジーミル・プーチン大統領と対決しているナワリヌイは、若者が大半を占める交流サイト(SNS)のフォロワーたちの声を代弁し、プーチンの腐敗を糾弾するバイラル動画を作成してきたオンライン活動家だ。

1月19日に公開した最新の動画では、プーチンが黒海沿岸にまるで宮殿のような豪邸を所有しているとの告発がなされた。ネット上ではすでに、この疑惑にインスピレーションを得たポップソングまで誕生。動画は、30年前の共産主義の崩壊以降、ロシアの組織的腐敗について耳にしてきた世代の心をつかんだ。

強権支配を強めるロシアでは、さまざまなオンラインツールが統制されており、デジタル化はオンライン・アクティビズムに影響を与えてきた。テレグラムなどの暗号化メッセージアプリは、旧ソ連時代に検閲を避けて広まった地下出版物「サミズダート」をほうふつとさせるコネクティビティー(接続性)をオンライン・アクティビズムに与えている。

プーチンは2014年、実業界への働きかけを通じ、同国最大手のSNSだった「フコンタクテ(VK)」の創業者パベル・ドゥーロフを追放し、VKを支配下に置いた。しかしドゥーロフがその後開発したテレグラムの着実な成長は、プーチンにとって頭痛の種となってきた。

ナワリヌイが主導する反汚職運動には、ネット上での通信を、連邦通信・情報技術・マスコミ監督庁(ロスコムナゾール)による監視や、度重なるテレグラム検閲の試みから守ることが含まれている。ナワリヌイの運動は、ネット上で組織しつつも、指導者の解放を求めるためなら真冬のロシアの街頭で抗議活動を行うこともいとわない、混合型アクティビズムのモデルを生んだ。ロシア政府の力がこれほど大きく脅かされることは、過去20年以上なかった。

同じくテレグラムを押さえ込むことができていない強権国家である隣国のベラルーシと同様、ロシアは近代的な民主主義国家としてのイメージを発信しようとする空虚な試みと、自国の政治の悲しい現実のはざまで板挟みとなっている。

プーチンは今、強いリーダーシップとプロパガンダ(宣伝)テクニックを持ち、国民が強く感じている思いに訴えかけるメッセージを発信するオンライン活動家ナワリヌイによって、かつてないほどの圧力をかけられている。ロシアによる内政干渉を直に経験した多くの国が、この成り行きを真剣に見守っている。

編集=遠藤宗生

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