経済・社会

2021.02.07 07:00

イランの「宇宙ロケット」の核ミサイル化を米国はどう防ぐか?

Iranian Defense Ministry/Handout/Anadolu Agency via Getty Images

イラン政府は2月1日、宇宙ロケット「ズルジャナ(Zuljanah)」の初めての試験発射を成功させたと発表した。このロケットは、イランの核兵器開発を遅らせようとする米国のバイデン政権の努力の妨げになる可能性がある。

イラン国防省のアフマド・ホッセイニ報道官は国営メディアに「今回のテストはイランが最も強力なロケットエンジンを実現する上で役立つものだ」と語った。

ズルジャナは約26メートルの3段ロケットで、第1段と第2段に固体燃料エンジンを搭載し、第3段に液体燃料エンジンを搭載している。イラン政府によると、このロケットは約227キロのペイロードを高度約500キロに送り込めるという。

これは衛星を地球低軌道に乗せるために十分なものであり、イランの宇宙開発計画と、さらには核ミサイルの開発においても、大きな一歩となるだろう。

固体燃料エンジンは柔軟性が高く、必要な支援装置が少ないため、液体燃料ロケットと比べて隠蔽が容易だが、製造に向けては精密な化学やエンジニアリング、製造の知見が必要だ。「固体燃料を用いる大型の推進装置の開発は難しい」と、カリフォルニア州のミドルベリー国際問題研究所の軍備管理専門家であるジェフリー・ルイスはツイートした。

ロケットを手にしたイラン政府は、宇宙開発と核兵器開発の両方を進めることが可能だ。人類初の宇宙ロケットは、ナチスドイツの弾道ミサイルのV2をベースとしていたことを覚えておきたい。

ズルジャナロケットは、1トンの弾頭を約5000キロ先まで飛ばせると、前述のルイスは推定している。イランは兵器化したズルジャナで、中国や英国の目標を攻撃することが可能だ。これは、米国とイランの間のすでに険悪な関係に緊張感を与えている。

バラク・オバマ前大統領の政権は2015年、経済制裁の緩和と引き換えにイランの核兵器開発に上限を設ける「共同包括的行動計画(JCPAO)」で合意した。

そして2018年、オバマの後継者であるドナルド・トランプは、米国をこの協定から離脱させた。トランプの動きは、オバマの外交上の遺産を無効化する試みの一環であり、妥協に基づく諸外国との関係に反発する共和党の意思を反映したものだった。

ミサイルを規制する新たな協定


JCPAOが崩壊すると、イランは核弾頭の研究を再開させ、それと並行してロケット開発にも乗り出した。彼らは核を完成させれば、それをミサイルに搭載して世界の大半の地域に打ち込める。バイデン政権は、イランの試みを阻止したいはずだが、それには難題がある。

バイデン大統領はすでに米国がJCPOAに再参加することを表明している。バイデン政権の国家安全保障アドバイザーを務めるジェイク・サリバンは、「過去2年間の間に崩れてしまったプログラムのパラメータや制約のいくつかを再確立したい」と述べた。

しかし、2015年の合意はそもそも弾頭のみを対象としており、ミサイルは対象としていない。イランのロケット発射を制約するために、米国は全く新しい協定を結ぶ必要がある。

ワシントンD.C.の武器管理協会(Arms Control Association)の核専門家であるケルシー・ダベンポートは、イランの近隣諸国を巻き込んだ地域的なアプローチが最も賢明だと述べた。

「バイデン政権はまず、2015年の合意を復活させた後、長期的な核のフレームワークを立ち上げ、地域諸国が主導する対話をサポートしていくべきだろう」とダベンポートは指摘した。

「イランのミサイルは地域の脅威であるため、近隣諸国との対話の中で、制限をかけていくのが理にかなっている。射程距離や燃料の種類、発射装置の数など、いくつかのポイントで制限が検討される可能性がある」と彼は話した。

編集=上田裕資

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