米国の元大統領たちには特別に、定期的に機密情報に関する説明が行われている。だが、トランプ政権で2年にわたって国家情報副長官を務めたスーザン・ゴードンをはじめ情報機関の関係者や議員の一部から、トランプはそうした情報を個人的利益のために利用する可能性があるとして、懸念する声があがっていた。
ゴードンは米紙ワシントン・ポストへの寄稿で、機密情報についてトランプに説明することは「国家安全保障上の潜在的リスク」であり、中止すべきだと主張。トランプには「ビジネスに関連して著しく複雑な状況があり、そこには外国企業も関わっている」と述べている。また、トランプが今後に向け、政治的野心を持っていることも指摘した。
下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党、カリフォルニア州)も1月、出演したCBSの番組で、「この大統領(トランプ)が機密情報についてもう一度説明を受けるべき事情はない。現在も、将来も」と発言。トランプは信用できないと明言した。
ジョー・バイデン大統領の主席補佐官、ロン・クレインは新政権の発足前だった1月上旬、退任後のトランプに対する機密情報の提供については専門家の意見を聞いた上で、新大統領が判断を下すと述べていた。
「元」大統領と国家機密
米国の大統領は通常、退任後も機密情報について定期的に説明を受ける。それは、国内政策や対外政策について話したり、外国の指導者と面会したりする機会があるためだ。そのため継続して国家の機密情報を提供することは、米政府の伝統となっている。
2017年にトランプに解任されて以来、前大統領を厳しく批判してきた元連邦捜査局(FBI)長官のジェームズ・コミーは出演した米ABCニュースの番組で、退任した大統領たちには「世界情勢と自国への脅威」に関する全般的な説明が「定期的に」行われていると説明した。
だが、「すべての元大統領がその特典を活用しているわけではない」と述べ、バラク・オバマ元大統領がトランプの在任中も引き続き説明を受けていたかどうかは不明だと語った。
コミーはまた、新たに国家情報長官に就任したアヴリル・ヘインズは、「米国の安全保障上、慎重に扱うべきすべての情報を含め、トランプに情報を提供すべきかどうか、非常に厳しく検討する必要がある」と述べている。
トランプは2018年、米中央情報局(CIA)のジョン・ブレナン元長官から批判されたことを受け、ブレナンに認められていた機密情報へのアクセス権限をはく奪した。米誌ザ・ニューヨーカーによると、トランプはオバマに対しても同様の対応を検討していたが、実行には至らなかったという。
一方、米紙ニューヨーク・タイムズは、トランプは在任中、機密情報に関する報告書が提出されても、グラフや図表を見るだけで、ほとんど読むことはなかったと伝えている。