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なぜ、政府の対応は、後手に回ったのだろうか。要因は3つある。第一に、新型コロナによる経済活動の自粛では、多くの正社員、製造業やIT業種の雇用者は、実は不便な生活は強いられるものの、所得低下は経験していない。新型コロナの感染拡大の恐怖のほうが大きく、飲食店・夜の街・旅行などの経済活動再開よりも、緊急事態宣言を出すことで早く新型コロナ危機を収束してほしいと考えている。

一方、飲食店の経営者や観光地のホテル経営者にとって、旅行者減少は死活問題であり、マスコミも、困窮の声を積極的に取り上げる。しかし、有権者数からみると所得は減少していない世帯が多数のようだ。NHKの12月調査に「新型コロナで収入は変化しましたか」という質問項目がある。「減った」が24%、「変わらない」が71%、「増えた」が2%、である。多くの人にとって、感染が怖いので飲食や旅行は控えるものの、所得が減っているわけではないのだ。国民全員に10万円を配布するという政策がいかに誤ったものだったかがわかる。また、Go Toキャンペーンが有権者の多数に支持されていなかったこともうなずける。経済活動の再開ではなく、所得が減った者、低所得者、あるいは観光業界関係者、飲食店関係者に限定する所得対策が必要だった。総じて、政府の対応は的外れであり、これが支持率の急降下につながったと言える。


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学特別教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

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