ビジネス

2021.02.04

「独学」でアジア発、わずか3年で世界を席巻する音楽レーベルへ

88rising CEOのショーン・ミヤシロ


第一に、とにかく挑戦すること。ショットは撃たなければ100%失敗する。チャレンジし続けなければならないし、そのためのビジョンを持たなければいけません。

私が『88rising』を始めたとき「アジアの代表として文化を発信する」という確固たるビジョンがありました。当時アジアのポップカルチャーといえば、K-POPしか知られていませんでした。アジア人に対する人種的なスティグマもあり、「K-POP」という音楽ジャンル自体に嫌悪感を抱く人も珍しくなく、アメリカでスケールアウトすることは非常に困難でした。

アジア系アーティストがアメリカの音楽業界に食い込むなんてあまりにも困難だと誰もが思ったからこそ、そこにチャンスがあると思った。私は大学を卒業していないし、これまで契約書さえ読んだこともなかった。だから独学で学びながら模索しつづけました。決して簡単ではなかったけれど、そんなときにデンゼル・ワシントンの言葉を思い出すんです。「転んでも後ろには落ちない。前に落ちてそこから学ぶんだ」と。

第二に、認知されて人気が出たり、牽引力を得たりなどある一定のレベルに達すると、外野からのノイズが必ず発生します。そのためには「自分だけの魔法」を守らなければいけません。

「魔法」とはポリシーや倫理観、美意識など人によってさまざまですが、自分にとってぶらしてはいけないところは守り続けることが大切です。もちろん、ダメージを軽減する意味での守りでもあります。同時に自分たちの個性や特徴、つまり強みを際立たせる「攻めの守り」でもあるのです。いまの私たちにとって大切なことは、いかに原点に立ち返り、純度高く自分の信念を貫き通せるか。稼ぐためには売れる音楽を考えてつくればいい。けど、私たちは他の誰にも方向性を指図されたくないのです。

挑み続けること、守り続けること。『88rising』は、これを続けてきたと言ってもいいでしょう。特に新たな市場に切り込んでいくとき、この2つは特に重要な役割を果たします。


ショーン・ミヤシロ◎88rising CEO。「VICE」などでの勤務を経て、2015年に前身のCXSHXNLY(現88rising)を設立。ビルボード一位を獲得するなど、米国内でアジア系アーティストが活躍する場を切り拓いている。

インタビュー・構成=竹田ダニエル

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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