ビジネス

2021.02.04

「独学」でアジア発、わずか3年で世界を席巻する音楽レーベルへ

88rising CEOのショーン・ミヤシロ

Rich Brian、Joji、NIKIなどアジア系の出自をもつアーティストが所属し、コンテンツ制作からマネジメントまで音楽に特化した事業を行う『88rising』。Jojiは、2019年のビルボード・R&B/HipHopアルバムチャートで1位を獲得した。CEOのショーン・ミヤシロは、なかなか受け入れられることがなかったアジアの音楽やカルチャーを、16年の設立からわずか3年で欧米の音楽シーンにもち込むことに成功している。

新たな市場を切り拓いた世界のBUILDERはいま、そして今後をどのように考えているのか。


私たちは音楽業界に真っ向から挑み、進化し続けてきた。そしていま『88rising』はアジアカルチャーを世界に発信する音楽プラットフォームとして徐々に知られるようになりました。

私がまだ若かったとき、サンノゼにある自宅の周りをぐるぐると運転しながら、自分は何者なのか、将来何をすればいいのかを不安になりながら延々と考えていたこともありました。だから、音楽業界で重要な人物たちとその同じ自宅でミーティングをしていること自体が奇跡のようにも感じます。アメリカの音楽業界はレッドオーシャンで、しかもアジア系のアーティストを受け入れる前例はほぼなかった。本当に大変でした。

といっても、起業家になりたいと強く思っていたわけではありません。ビジネスのことを学んだのは『88rising』を始めてから。だから誰よりも早く賢くなる必要があり、そのためにたくさん挑戦して、たくさんの失敗を経験することを第一に考えました。ビジネススクールで勉強するなど方法はたくさんあるけれど、最高の経験は、現実世界であらゆる状況に遭遇してはじめて味わえることだと思っています。

当然、経営的に厳しい時期もありました。でも、私はそれをビジネスだと思ったことはありません。むしろ、お金儲けの側面は不要だとさえ思っていた。なぜなら、私たちにはミッションが最も重要だからです。「アジアを代表する音楽プラットフォームを提供すること」が私たちの存在意義で、そのためにコンテンツのクリエイティブに注力する。ただそれだけなんです。私たちにとって「創造すること」は、自分たちの個性の表現、そして企業成長のためのシンプルかつ最大の手段。決して「どうやって10億ドル稼ぐか」を考えているわけではありません。

私たちがいま世界の音楽シーンで名が知られてきた要因でもあり、これから何か始めようとしている人にアドバイスするとすれば、大きく2つあります。
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インタビュー・構成=竹田ダニエル

この記事は 「Forbes JAPAN No.076 2020年12月号(2020/10/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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