人生で下した決断の中で最も正しかった「毎日がワーケーション」という選択

浅生亜也さん


鈴木:それはまさに浅生さんの会社のビジョンですね。

浅生:はい。「豊かな日常で溢れる美しい日本」を創ることをビジョンに掲げています。

リモートワークの促進でどこからでも仕事ができるようになると、地方移住が進みます。自然環境が素晴らしい地方なんて日本中いくらでもあります。日本中に魅力的なデスティネーションになるポテンシャルがあるんです。

鈴木:リモートワークが当たり前の社会では、企業の形も変わりますよね。

浅生:すでに、この1年弱のウィズコロナの中で表面化していますよね。リモートワークが続くことで企業は社員のエンゲージメントを高める対策や工夫が必要になってきます。昨年10月に東京都のGoToトラベルキャンペーンが解禁になった直後、企業が合宿や研修で社員を集めたり、郊外や地方にサテライトオフィスを設置するなど活発な動きがありました。

当社は、妙高髙原に山岳リゾートLIME RESORT MYOKOや、箱根にLIME RESORT HAKONEという貸切可能な共創型リトリートホテルを運営しているのですが、その頃堰を切ったように問い合わせがありました。私は今後、この複数人での共創型ワーケーション=「コワーケーション(Co-Workation)」の需要も平行して伸びると思っています。

実は、コロナ禍の中、新しくワークスタイルの豊かさを追求するプラットフォーム事業(PerkUP)を立ち上げました。Zoomで創業メンバーを集め、オンラインで設立準備をし、一度もリアルに会うことなく会社の登記まで進めました。ウィズコロナ時代の創業スタイルといったところでしょうか(笑)。

鈴木:会社設立まで一度もメンバーとリアルに会ったことがないとは驚きです。いかにも浅生さんらしいですね。これからは、これまでのホテル業界を超えて事業を展開していくのですか?

浅生:私の中ではもはや境界線はなく、新しい働き方を提案するPerkUPの事業と、ホテルでの新しい滞在を提案するSAVVYの事業とは本源的には繋がっているんです。でも、この展開は私が軽井沢に移住して、自身で日常の豊かさを実感していなかったら発想しなかったかもしれません。

鈴木:これから移住を検討されている方々へ何かアドバイスはありますか?

浅生:都心からの移住となると、トレードオフで何かを諦めたり、捨てて来なくてはならないのではと思いがちですが、私が移住して5年経った今、都心での生活と比べて何かに困ったことがあるかと聞かれても、思いつくことはありません。ましてや軽井沢は東京都24区(または、港区北麻布)と言われているように、選択肢は少なかれど一通りモノは何でも手に入ります。それよりも、得るものがはるかに上回るのが軽井沢での生活です。

私も夫も幼少期は海外で育ちました。日本から遠く離れ、駐在する日本人だけのコミュニティで育つと、その後、何十年経ってもその時一緒に過ごした人のことは家族や親戚のように感じるものです。軽井沢も基本は人口2万人の小さい町です。この小さなコミュニティの中にいると、親戚のように互いの日常を気にかけるようになります。

困った時にはすぐに手を差し伸べてくれる友人たちが近所にいるという環境は、なかなか良いものです。この土地に同じ時期に移住するというのも、何かのご縁であり、お互い様、という暗黙の価値観がとても心地よい町です。
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文=鈴木幹一

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