経済・社会

2021.02.02 16:00

米政府がミャンマーの政変を「クーデター」と呼ばない理由

Guillaume Payen/Anadolu Agency by Getty Images

Guillaume Payen/Anadolu Agency by Getty Images

ジョー・バイデン大統領は2月1日、ミャンマーで発生した政変で、国軍がアウン・サン・スー・チーらの要人を拘束したことを非難したが、他の諸国の指導者とは異なり、この事件を「クーデター」とは呼ばなかった。

この背景には、米国がこれをクーデターと定義した場合、ミャンマーへの援助を打ち切らねばならない事情があるとされている。米国には、クーデターで権力を握った政権への援助を禁じる法律があるからだ。

バイデン政権は、ミャンマー軍によるアウン・サン・スー・チーの逮捕と政府の乗っ取りをクーデターと呼ぶべきかどうかを議論していると、2人の匿名の関係者が1日にCNNとポリティコに語った。

国務省の高官はフォーブスに対し次のように述べた。「ミャンマーでの出来事は明らかにクーデターと見られるが、国務省は必要な法的・事実的分析を行っている。我々は評価を下す前にその結果を待つことになる」

これは言葉の選択をめぐる議論ではない。米国の連邦法で、政府は軍部がクーデターで政権を握った国への援助を断つことが義務付けられている。

バイデンは「クーデター」という用語を使わなかったが、今回の出来事を軍による「権力の掌握」と民主主義への「攻撃」と称し、ミャンマーに対し今から4年以上に解除された制裁措置を再び発動する可能性を示唆した。フォーブスはこの件でホワイトハウスにコメントを求めたが、回答は無かった。

米国国際開発庁のデータによると、米国は2019年にミャンマーに2億1640万ドル(約227億円)の対外援助を行っていた。トランプ政権は、ミャンマー軍がロヒンギャ人に対する民族浄化で非難された後、2017年に軍事援助のいくつかを断ち切ったが、米国はその後も経済開発と選挙の整合性プログラムのための援助を続けており、その多くは、今回の事件がクーデターとみなされた場合、打ち切られることになる。

英国のボリス・ジョンソン首相や欧州理事会のチャールズ・ミシェル議長などは、ミャンマーで起きた政変を「クーデター」と呼んでいる。一方、カナダや日本、オーストラリアのような他の米国の同盟国は公式声明でこの用語を用いなかった。

米国は2013年、エジプト軍がムハンマド・モルシ前大統領を追放して政権を掌握した際に、同様のジレンマに直面した。多くの専門家の提案に反して、バラク・オバマ元大統領はこの事件をクーデターとは呼ばず、エジプトはイスラエルに次ぐ第二の米国の援助国であり続けた。オバマは、エジプトへの軍事支援を一時的に凍結したが、最終的にはその制限を解除していた。

編集=上田裕資

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