しかし、ここで怯むような性格ではなかった。12歳の頃に運用した10万円が、確実に増えていることを知っていたからだ。高橋には成功体験があったため、失敗に対する恐れがほとんどなく、投資のトライアンドエラーを続けた。
高橋ダンはなぜユーチューバーを始めた?
ウォール街などでの経験を通して、高橋はお金を増やすノウハウを身につけた。
「学生の頃はJPモルガンと、チューリッヒに本拠を置くグローバル金融機関クレディ・スイスでそれぞれ3カ月間インターンシップをしていました。そして卒業後、モルガン・スタンレーに就職しました」
彼の著書「僕がウォール街で学んだ勝利の投資術」では、モルガン・スタンレー在籍中に直面した、2008年9月のリーマンショックについて語っている。
ウォール街に入って1年後に見舞われたリーマンショック。大きな損失で苦しむ個人投資家たちを目にした。「お前のせいで株価がさがったじゃないか」と、リーマンショック後は上司から冗談を言われることもあった。オフィスから、私物が入った箱を抱えた失業者たちが出てくるのを見て、当時新人だった高橋はこの光景が人ごとには思えなかった。
ウォール街で働いていた高橋。そこで、日本の将来に強い関心を持つようになった(Unsplash)
世界的な金融機関で、競争と苦労を切り抜けてきた高橋。ではなぜ、彼はYouTuberになったのか。そこには、高橋の「日本の金融リテラシーを上げたい」という切実な思いがあった。
「語弊を恐れずに言うと、自分が将来日本で子供を産んで育てる場合、今の日本社会のままだと納得できないからです。教育制度に、金融制度、そして成長率について」
世界中に繋がりを持つ高橋は、各地で子育てをする友人たちと「この国の教育制度は良い」や「この国には、〇〇において成長が凄まじい」といった議論をよくするという。
「ウォール街にいた頃も、日本についてのリサーチペーパーをよく見ていましたが、非常に危ないと思う点がいくつかありました。例えば、教育制度。OECDの国の中で、日本はオンライン授業が非常に遅れているというニュースを見ました。自粛期間中、国立学校の中で、5%のみがオンライン授業に対応していたとのことです。これは、アフリカ含めてほとんどの途上国のより低い割合です」
もちろん英語能力も懸念点の一つだ。インド、ベトナム、マレーシア、訪れたどの国よりも日本の英語力の低さが深刻だったと振り返る。「日本の現状を変えなければ」と、高橋は考えた。
今の社会で若者はドリームを持てるのか?
「日本政府は未来に向けて莫大な金額を貯めてあると聞いています。裏を返すと『日本が未来にあまり期待してない』という風にも読めます。
そんな状態で、若者たちがドリームを持てると思いません。若い世代が国を作るので、ドリームを持ちやすい社会になるべきであると考えます」