ユニコーン企業への就職は妥当か 「時価総額」という観点から考える

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時価総額というマジック


ただし、この時価総額というのは、前述したように「企業の価値を表す1つの尺度」にすぎない。時価総額が大きいから良い会社で安定しているというのはあまりにも安直な発想だ。時価総額が大きいベンチャー企業ということで、学生が紹介してくれた記事に載っていた企業は、すべてが未公開企業、つまり上場していない企業だった。

まだ上場企業の時価総額であれば、市場参加者が多い株式市場で取引をされるため、時価総額にそれなりの整合性はあるかもしれない。しかし、未公開企業の場合は、ベンチャーキャピタルや一部の事業会社の傘下にある投資専門の会社が市場参加者となる。その場合、そこで値付けされる時価総額に整合性があるかどうかは非常に疑わしい。

実際にその記事に載っていた企業の時価総額は数百億円のものが多く並んでいたが、現時点では赤字の企業も多かった。もちろん、ベンチャー企業は当初は大きく赤字を掘って、そのあとに非常に高い成長率を記録して一気に大企業になる場合もあるが、ビジネスモデルとしてそれほどの爆発力があるとは思えないような企業もあった。

あくまで時価総額は尺度の1つでしかないという考え方は胸に刻んでおくべきだろう。

とはいえ、一概にベンチャー企業がダメだという話ではない。私自身、一部上場企業、従業員が10名に満たないベンチャー企業や外資系企業、また外国企業で働いた経験があるし、起業経験もフリーランス経験もある。考えられる働き方はだいたい経験したつもりだ。すべての経験を通して言えば、やはりどの働き方にもメリットとデメリットはあるということだ。

1つ注意したい点は、メリットとデメリットは意外と表裏一体で、捉え方次第で180度変わってくるという点だ。ベンチャー企業を選好する学生にありがちなのが、ベンチャー企業のほうが、新人の裁量が大きいというメリットを挙げるのだが、この点1つとっても、一見メリットに見えることがデメリットであることは多い。
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文=森永康平

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