人口1億2700万人の日本は、全国にコンビニが5万5000店舗、スーパーマーケットが8000店舗あり、世界で2番目に大きな小売市場となっている。かねて高齢化による労働不足に直面してきた日本では、自動精算が問題の解決策とされてきたこともあり、自動レジを試すには絶好の場所だと言えるだろう。
IMAGRは最近、東芝テックが主導するプレシリーズAの資金調達ラウンドで、新たに950万ドル(約10億円)を調達したばかり。オークランドの本社敷地内で自社のコンビニを運営し、火曜日と木曜日には一般の客にも開放しているほか、欧州展開の準備もしている。
IMAGRのスマートカート「Halo」は、かごの縁に取り付けられたカメラがコンピュータービジョンとAIを活用して商品を認識し、自動で登録する。カメラやセンサーをはじめ、多数のハードウェア機器を用いるほかのレジなし店舗と異なり、IMAGRのシステムは充電ステーションとデスクトップサイズのサーバー、店員が新商品をスキャンして登録する「イメージングステーション」という機器だけで運用できる。
新型コロナ禍のなかで、IMAGRが日本と地理的に離れたニュージーランドから導入を進められたのも、このようにシステムが手軽にセットアップできるからだ。
客はあらかじめアプリをダウンロードし、店員は運用アプリでカートの管理や客の買い物の追跡をする。スマートカートはタッチスクリーンや計量器がついているものが多いが、Haloはよりユーザーフレンドリーな体験や製造コスト削減のため、そうした装置は採用していない。
カートから商品を出し入れする際のデータ量は電子メール1通分程度なので、カートから客の携帯電話までのデータ送受信の待ち時間も短くすむという。
IMAGRは、日本では乗り越えなくてはならないハードルもある。一般に思われているのと反対に、日本は決済面でのテクノロジーの導入が遅い点だ。調査会社のグローバルデータによると、2019年時点で日本の決済の73.3%は現金で行われており、大手コンビニのセブン―イレブンが非接触決済を導入したのはようやく昨年夏のことだ。
IMAGRのウィリアム・チョムリー最高経営責任者(CEO)は「当社のシステムは、ほかのレジシステムのように、客をレジ係にするものではありません。客が従来の買い物の仕方を変えず、怖がらないで使えるように、システムを設計しています」と説明している。
人々がますますプライバシーに敏感になるなか、モジュラー式のカートと、商品の識別目的だけのコンピュータービジョンを使うIMAGRのシステムは、未来の無人店舗を生み出すのに最も有望な方法かもしれない。