イケアは78年前にスウェーデンで創業して以来、ほぼ一貫して、巨大な「デスティネーション・ストア」(独特の魅力を持ち、客がその店だけを目的に来店する店)という位置づけを維持してきた。しかしここに来て同社は、何でも揃う万能型店舗という方針を改め、複層的な店舗ネットワークを構築する戦略へと急速に舵を切りつつある。
そのネットワークには、都心のインストア型店舗や、住宅地のデザインサービス特化型店舗、オンライン注文商品を受け取るための店舗が含まれている。2024年までには、米国の主要5都市でこうした3形態の店舗をオープンする予定だという。
こうした急激な方針転換は、イケアが事業を強化して業績向上を目指すと同時に、持続可能性ならびに環境志向性の高い事業構想を推進する取り組みの一環だ。2020年は、イケアにとって一利一害の年だった。春には一時期、全米の店舗が休業に追い込まれたが、売上は47億4000万ドルを記録し、eコマースの売上は32%増となった。パンデミックは、同社が小売市場の変化に対処するべく取り組みを強化するきっかけとなった。
「あらゆることをテストしてきた。私たちは未来のためのイケアを構築している」。イケア・アメリカの会長で最高サステナビリティ責任者(CSO)ハビエル・キニョーネス(Javier Quinones)は、非公開企業にとっての決算報告書にあたる2020年度事業概況書を公表した際、インタビューに応じてそう述べた。
キニョーネスによると、「変化」が始まったのはおよそ3年前。イケアが、50万平方フィート(約4万6452平方メートル)の広さを持つ米国ではよくある倉庫型ショールーム店舗ではなく、異なる規模の店舗を展開し始めたころだ。「今では、買い物客の要望に応じて3形態の店舗がある。しかし、マルチチャネルについては考えていない。チャネルは1つだ」