DXが加速を続ける中、なぜ成果を実感できない企業が多いのか
VUCAの時代をもたらしたコロナ禍によってリモートワークが普及し、オンライン会議の導入やペーパーレス化など、まるでタイムマシーンに乗ったかのように一足飛びにワークスタイルが変容している今、DXはあらゆる企業にとって喫緊の課題になっている。しかしながら、DXに一定の投資をしたものの、その成果を実感できている企業は決して多くないのが現状だ。
こうした企業のDX推進を支援することをビジョンに掲げ、2019年10月に事業を開始したのがインキュデータだ。同社の取締役 町田紘一は、テレワークやオンライン会議の導入といったデジタライゼーションの先に、本来のDXの姿がある、と語る。
「今はまだDXという言葉一つとっても人によって定義が違います。テレワークやペーパーレスなど、まずは業務のデジタライゼーションから、という企業も多い印象です。DXというと、システムを導入して業務改善することが目的のように捉えられることも多いのですが、本来DXは、ビジネスモデルそのものをデジタル化することで、ユーザへの提供価値を変えられるものだと思います」
システムを導入しデジタル化が進めば、さまざまなデータを集めることはできる。しかし、せっかく集まったデータも整備し、分析して多面的に活用できなければ「宝の持ち腐れ」となってしまう。データを分析することで市場のニーズを汲み取り、新たな施策に繋げてこそはじめて、DXの本来の目的が達成される。多くの企業がDXの成果を実感できない理由はここにあるといえる。
真のDXを実現するために必要なもの。それは「DXのプロ」によるサポート
インキュデータでは、多くの企業が抱えるこうしたDXの課題を支援している。システムの導入はもちろん、そこから得られるデータを活用したマーケティングの実施にいたるまで、一連のDXをサポートすることで注目を集める同社のサービスは、ソフトバンク、博報堂、トレジャーデータという親会社三社の強みを活かしたワンストップ支援が大きな魅力だ。
「ソフトバンクは、いろいろなお客さまと事業創造を行い、コミュニケーションのサポートをしてきたので、お客さまから課題を吸い上げ、ビジネス戦略を立てることができます。博報堂は大手広告会社として、マーケティングやコンサルティングのリソースやノウハウがある。トレジャーデータは企業のデータ活用を支援するCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を開発してきたリーディングカンパニーです。それぞれの分野で多くの実績を持つ三社のノウハウを掛け合わせた、理想的なワンストップ支援をご提供できます」(町田)
本来のDXを実現するためには、システムの導入だけでは、課題解決には繋がらない。それぞれのビジネス特性に対応したシステムの導入とDXの推進をもってはじめて、業務改善にとどまらない、その先にあるマーケティングや施策実行までがスムーズになる。まさにワンストップだからこその理想的な支援を実現しているのだ。町田とともに、サービス開発に携わる久野清治は言う。
「インキュデータとしては、ビジネス的なDX、つまり、ビジネスモデルやマーケティングのデジタライズなどのDXを支援していきたいと思っています。マーケティングにはデータが必要なので、まずはそのデータの整備や統合をしましょう、というのが初めのステップです。次にそのデータを使って何をするか、どうコミュニケーションするか、というプランニングがあります。つまり、データを収集・整備・分析して、いかにマーケティングをするか、それをどう施策に落とし込んで実行していくか。それぞれ出自の違うプロが集まっているからこそ、その全てを支援できる、というのがインキュデータの大きな特徴であり、強みだと思っています」(久野)
企業のDXという課題の一つに徹底的に寄り添い、あらたなビジネスモデルの模索や、施策の実行まで併走しながら、課題全般までも解決と成功体験に導く。DXのプロ集団ならではのそうしたスタンスも、インキュデータが支持を集める理由の一つになっているに違いない。
これからの時代のマーケティングを支援する、新しいソリューション
インキュデータは、企業のDXと事業創出を支援することをビジョンに掲げている。世界各国でオンラインのプライバシーデータを守る動きが進む中、DXやマーケティングを支援するツールとして、2020年12月、3rdパーティクッキーに依存しないマーケティングを支援するソリューションの提供を発表した。
オンライン広告のターゲティングにはこれまで、Webサイト以外の第三者から発行される3rdパーティクッキーが多く利用されてきた。しかし、SNSやECサイトでの購入、銀行口座の管理やサービスの申し込みなど、多くの社会活動がインターネット上で行われるようになった昨今、個人情報保護の観点から、一部のWebブラウザではすでに3rdパーティクッキーの発行が制限され始め、EUのGDRP(一般データ保護規則)や2020年6月に可決・成立した日本の「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律(改正個人情報保護法)」など、クッキーの利用に制限がかけられる状況となっている。
そこで、クッキー以外の1stパーティデータを取得・活用し、クッキーについてもユーザに分かりやすく同意取得できる仕組みで、今後も効果的なデジタルマーケティングを実現するツールとして発表されたのが「Loghy™(ロギー)」と、クッキーの利用に関する同意管理プラットフォーム「Qonsent™(コンセント)」だ。
「Loghy」はユーザがSNSなどのアカウントを利用し、各種Webサービスにログインできるようにするためのプラットフォームだ。ユーザに会員登録してもらうことによって1stパーティデータを取得できることに加え、SNSなどのアカウントに登録された情報が会員登録フォームに自動で入力されユーザの手間が軽減されるため、新規ユーザの獲得数向上やサービスの継続的な利用も期待できる。
Webサイトを訪問したユーザが、広告への利用やアクセス解析など個別のサービスごとに同意の有無を選択して、クッキーの取得・利用状況を確認・変更することができる同意管理プラットフォームが「Qonsent」※1だ。Webサイトの運営事業者はユーザからの同意の取得状況を管理できる。
「現在の流れは、必要なデータを自分で集めて活用する、といういわばあるべき姿。それを支援させていただくための仕組みが、新しいソリューションです。これからは企業が自らデータを取得し、戦略的に活用していく必要がありますが、データ活用にはある程度のノウハウが必要なため、一朝一夕ではなかなか実現が難しい部分でもあります。インキュデータにはデータ活用に長けたメンバーが揃っていますので、そういった面も含めた総合的な支援が可能です。
今後、データはきちんと活用する必要がありますが、形がないものをいきなり大きなプロジェクトにつなげるといった活用をイメージするのは難しいと思いますので、まずはLoghyを導入いただいて、欲しいデータが集まることを実感していただきたいです。その先のデータの活用については、インキュデータでご支援いたします。Loghyの導入をきっかけに、DX推進の間口がもっと広がっていけば、と思っています」(久野)
※1「Qonsent」は、データ活用の透明性を確保し、安心してパーソナルデータを活用できる環境の構築を目指す株式会社DataSignのサービスを利用して提供するソリューション
インキュデータが日本のDXに果たす役割とは
企業のDX推進を支援し、最適な形でのデータ収集と活用をサポートするインキュデータ。多くの企業が試行錯誤していることからも分かるように、真のDX実現に向けた支援というのは、そう簡単なことではない。しかし企業から寄せられる高い期待をクリアし、支援するためのケイパビリティはある、と久野は言う。さらにDXを推進する上で避けては通れない、データの収集や整備・分析については、セキュリティ、プライバシーポリシーを遵守したきれいなデータを集めて、データ活用のプラットフォームを構築することができること、それはやはり一番の強みでもある、と町田も続ける。しかし両者とも、ツールを提供し、マーケティングを支援することはあくまでクライアントとの関係の入り口と位置づけ、そこをゴールにはしていない。
「インキュデータにとって、今の主戦場はマーケティング。データを活用したマーケティングの施策や広告、いわゆるマーケティングオートメーションやCRMなど、そういった領域でどれだけお客さまのマーケティング活動をデジタル化できるかが、今のビジネスのメインです。ただ、5Gテクノロジーの動きもあいまって、リモートワークに限らず、今後もあらゆるもののデジタル化は加速していくと考えています。将来的には5GやAIといったテクノロジーを利用した製造業や物流のデジタル化、需要予測など、今とは違うニーズが出てくるでしょう。中長期的な話にはなりますが、そういったニーズに対しても、サポートができるよう支援の領域は広げていきたいですね」(町田)
ソフトバンク、博報堂、トレジャーデータという三社それぞれの立場で意見を交わすことでいろいろなアイデアのブラッシュアップがしやすく、市場の動向にマッチしたソリューションが提供できるのは、インキュデータならではのメリットです。製品やソリューションをただ売るのではなく、次世代のデータビジネスにつながるような、日本におけるデータ活用のスタンダードをデザインし、提供していけたらと考えています」(久野)
企業のDXを支援することで、データを基軸とした事業変革を推進し、新しいビジネスモデルや事業創出を支援する。そして最良のパートナーとして、クライアントと一緒に事業を成長させていく。インキュデータが目指す、本当のDXの行き着く先は、そこにある。
町田 紘一(まちだ こういち)◎インキュデータ株式会社 取締役
2002年日本テレコム(現・ソフトバンク)に入社後、データセンター、デジタルサイネージ、デジタルマーケティングなどの通信以外の新規領域において、戦略策定、経営管理、M&A、投資先支援などに従事。2015年よりデジタルマーケティング事業統括部事業戦略部長。19年より現職。
久野 清治(ひさの せいじ)◎インキュデータ株式会社 IDマネジメント部 部長
大学卒業後、グローバル最大手のOS・アプリケーションベンダーに入社し、パートナーアライアンス業務を担当。その後、外資系デジタルマーケティング企業でのセールス職を経て、2020年6月にインキュデータに入社。新ソリューションの「Loghy」「Qonsent」の開発責任者を務める。