ほぼ業界全体がこうしたトレンドの変化に乗り遅れまいとしている。ワーナーは、今年リリースする映画作品はすべて傘下の動画配信サービス「HBOマックス」(サービス提供国は米国のみ)でも同時に公開する予定だ。ディズニーも、傘下の動画配信サービス「ディズニー+」向けのプロジェクトを100以上用意。そしてストリーミング業界最大手であるネットフリックスは、通常のドラマ作品に加え、年間を通じて毎週少なくとも1本の新作映画をリリースするとしている。
業界が過渡期にあることは明らかだ。自宅での視聴向けに公開される映画がますます増え、「映画」と「テレビ映画」の境界線となってきた劇場公開が廃れつつある。これまでテレビ映画はクオリティーの低さで知られていたが、2021年は人気の俳優・監督の多くがテレビ界に進出するだろう。
ストリーミングメディアでの契約は多くの場合、俳優や監督が複数のプロジェクトに参加することを約束する。作られる作品の内容は、視聴者の消費傾向を分析するアルゴリズムに基づいて決められることが増えてきている。加えて、高速インターネット回線、大画面テレビ、高品質のホームサウンドシステムの普及が進んでいることを考慮すれば、業界全体が変貌を遂げていることも想像しやすいだろう。
ソニーは最近、自社のテレビブランド「ブラビア」向けに、4KのBlu-rayディスク並みの画質を誇る動画のストリーミングサービスを開始すると発表した。この新サービスは主要ストリーミング企業に対抗することが目的ではないが、スタンダードを確立し、映画やテレビの標準的な画質を高めることに貢献する可能性がある。
既に、音楽業界を変えたストリーミングは今、オーディオビジュアルコンテンツも変えつつある。今や月額でほぼ無限のコンテンツを楽しめる上に、機器も進化して自宅で高品質のコンテンツを視聴できるようになっている。
2020年には多くの人が何か月も外出自粛を余儀なくされた結果、ストリーミングサービスのサブスクリプション数は急増し、消費者が自宅でコンテンツを視聴する時間も増えたことで、それまでのトレンドが強化され、消費者の習慣は変化した。映画館が変化に対抗できるかどうかはまだわからないが、ネットフリックスだけでなくその他の業界全体の動きも見ると、先行きは明らかなように思われる。
ビジネスモデルの変化は、従来型のテレビ局にも影響を与えており、資金が潤沢で世界展開もしているストリーミング企業に太刀打ちすることがますます難しくなっている。
コンテンツ消費モデルは世界的に変わっているのだろうか? 新型コロナウイルスのパンデミックにより、映画館は死を迎えたのだろうか? 人々はこれからも映画館へ通うだろうか? それとも、ポップコーン片手に友達と映画上映を楽しむ習慣は、もう終わったのか? あなたは、皆がワクチン接種を受けられるようになったら、外出して再び映画館へ足を運ぶ自分の姿を想像できるだろうか? それとも私たちは業界の予想通り、自宅のソファでコンテンツを消費することに慣れてしまったのだろうか?