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その一つに、日本の潜在的な医療環境がまだ存分に活用されず、眠っているという現実があります。当初から医療崩壊への懸念ばかりが強調されますが、実は、PCR検査の機械にしても、使われずにいる台数が悠に数百台を超えるという事実をご存知でしょうか。

私にそれを教えてくれたのは、女子レスリングの実績でも知られる至学館大の谷岡郁子学長でした。自然科学系の学部を持つ大学にはもともとPCR検査の機械があり、大学がクリニックの認可を受ければ、その機械でPCR検査ができる。至学館ではその準備を整え、昨年10月から全学生と全教職員を対象にPCR検査を始めたそうです。谷岡学長によれば、東京都内の大学にあるPCR検査機だけでも300台はくだらない。これが厚労省と文科省の縦割り行政の壁もあり、まったく活用に至っていない。この一部でも活用すれば、東京五輪に参加する選手やスタッフ、関係者の検査が賄えるかもしれません。

つまり、一般の人々に影響を与えずに独自にキャパシティを増やせる可能性がある。そしてそれは、東京五輪後に一般の人たちにも門を広げられるのではないでしょうか。

このように、東京五輪をなんとか安全に実施しようと努力し、日本の潜在能力をなし得る限り活用する様々なアイデアを出し合うことは、コロナ対策にも大きな好影響を与えることができるというわけです。


Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images

観客の来日は禁止、報道陣も来日不要… 徹底した対策を取るためにタブーなき議論を


単純な、そして感情的な中止論は、不安を煽り、スポーツの意義を軽くすることはあっても、建設的な何かは生みません。どうすれば安全に実施できるか、どうしたら国民が応援できる五輪の開催ができるかを議論し、対策することこそが前向きなコロナ対策につながります。タブーなど考えずに、議論を尽くすべきです。

・海外からの、観戦目的での来日は遠慮してもらう。
・報道陣も、すでに日本にいる特派員は別として、東京五輪のための報道陣の来日は禁止する。すべてリモートで対応する。
・安全が確保できない接触型の競技は「中止もやむなし」くらいの姿勢でチェックを重ねる。
・感染状況が深刻で、選手の健康が確認できない国の参加は自粛を求める。
・競技によっては、自国からのリモート参加も検討する。例えば体操競技は、リモートで結び、ジャッジする。
などなど……

あらゆる可能性を排除せず、従来の形式にとらわれない実施方法を模索する。このことは必ず、オリンピック改革やスポーツの発展、ひいてはウィズコロナ・アフターコロナのより良い社会づくりにつながる絶好の機会になると信じています。


小林信也◎作家・スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。慶応大学法学部法律学科卒。在学中から執筆活動を始め、「ポパイ」「ナンバー」編集部を経てスポーツライターとして独立。テレビ・ラジオへの出演、また選手育成や大会プロデュースも行うなど幅広く活躍中。主な著書に『子どもにスポーツをさせるな』『高校野球が危ない』『カツラーの秘密』など。


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文=小林信也 編集=宇藤智子

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