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聖火リレーの日々が教示している。コロナ禍の五輪のあり方を。松山市内の聖火リレーは中止された。感染対策のためという。その代わり、その日の最終ランナーが聖火皿に点火するクロージングセレモニーの会場に松山市を走る予定だったランナーが並び、トーチキスを順番に行う。そして、最後に一緒に走るグループランナーを代表してオリンピアンの元マラソンランナー土佐礼子選手が聖火皿に点火した。

この映像を見て聖火リレーに絶対に必要なものが見えてきた。それは走るという行為が、喩え歩くような速さであっても、もたらす意味であった。その身体活動が表現する、未来に向かって動くという行為が人々の応援の対象となる。移動なきリレーは記念撮影に終わらざるを得ない。

4月23日、宮古島市の聖火リレーが中止になるという情報が入った。5月2日に公設市場から市役所までの約2.6キロを14人のランナーが約30分で走る計画であった。

大阪の先例を見れば、公道開催を断念して、市内公園などでの代替開催を組織委員会に打診したという経緯は当然に見えるが、果たして感染抑制体制を敷いた上での公道開催は不可能であったのだろうか? 市は組織委から予定通り公道を走るか中止かを求められたというが、市が打診した市内公園などでの代替開催という選択肢はあったのではないか?

世界の理念実践のため、いかにチャレンジできるか


コロナ禍での五輪開催に求められるのは柔軟性である。理念の実践のためにいかに対応できるかというアプローチが欠かせない。聖火リレーの理想とコロナ対策の現実の二律背反の止揚。簡単なことではないが、チャレンジすることが開催への灯火となり、聖火リレーが感染対策や簡素化の中でも外してはいけないものを示してくれるだろう。

聖火リレーには意味があるのだ。


JOCの山下泰裕会長(Photo by Mikhail Svetlov/Getty Images)

この哲学を東京オリンピック2020ホスト国のオリンピック委員会、すなわち日本オリンピック委員会(JOC)こそ、堂々とアピールするべきだろう。それがこの困難な状況にある人々を救う。もう時間はない。山下泰裕会長の出番が来ている。彼は日本スポーツの創始者、嘉納治五郎の魂を継ぐ者なのだから。


春⽇良⼀◎スポーツコンサルタント。長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。長野五輪を招致した男の異名持つ。JOC在籍中、バルセロナ五輪など日本代表選手団本部員を通算5大会経験。オリンピック運動に共鳴し国際担当として活躍。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)主筆。

文=春日良一 編集=宇藤智子

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