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また、破線(─ ─ ─)で示した見えない壁の下位部分は、配信サーバが分かれていて、ミキシングした(スピーカーの会話を全部混ぜた)結果をオーディエンスに配信している構造となっている。これによって、Zoomより1サーバあたりのコストが低く設計できる。一度ミキシングしているのでスピーカー間の会話がリンクしており、オーディエンスが聞く音に対するクオリティも高い。

スピーカーはUDPでClubhouseのサーバとすごく太くリッチにつながっている。一方で、オーディエンスはそのサーバがミキシングした結果を聞いている。

実はスピーカーとはリアルタイムで繋がっていないオーディエンス


オーディエンスは実はスピーカーとはリアルタイムで繋がっていない。オーディエンスからスピーカーに昇格するときは明確に接続先が変わる。

この実装の場合、スピーカーが増えると、ネットワークコストがものすごく大きくなるが、ClubhouseはUI/UXで「オーディエンスがなるべくスピーカーにならない」「しょせん観客なのに、なぜか親近感がある」ということを気にしながら作っているので、コストが破裂しない。

これは、ユニットエコノミクスの重要なパラメータとしてUI/UXが組み込まれているので、サービスの設計としてすごく面白い。ECサイトでCVRをいじるとかとは次元が違うパラメータにUXが紐づいている。

ちなみに、下種な勘繰りとしては、サービス参加に際して携帯番号認証でユーザを絞っているのは本人認証というのは建前で、前述の複雑なネットワーク構造をユーザ国内に構築する準備が出来るまで普及出来ないようにしている、つまり専用の複雑なネットワークが構築された国からサービス展開していることや、携帯電話の局舎に近い場所にハブとなるサーバを設置する(MEC:Mobile Edge Computingを採用している)などが理由なのではないか? と推察する。

常にハイクオリティに繋がっているけど、実際はコストが低いという構造のネットワーク設計は今回のようなB2Cの仕組みだけではなく、まさにCOVID-19における現場やコラボレーションワークの場面でも重要な話である。

作業現場等でリアルタイムな遠隔支援をおこなう技術(コネクテッド・ワーカー)を提供している弊社でも、現場のリアルタイムなやりとりにこの仕組みを何らか取り入れることで、よりチームワークを高められると考えた。

今回のClubhouseの事例を分析して、日本のB2Bサービサーも、これがB2Cの事例であるとは考えず、様々な技術チャレンジを取り入れて、日系サービスを一緒に盛り上げていってほしいと思う。

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久池井淳◎天才デジタル技術者育成を目指した国家プロジェクトである経産省/IPAの未踏事業に学生時代に採択された後、アクセンチュアの戦略コンサルティング本部にて日本支社唯一のフューチャリストとしてR&D戦略・技術戦略・技術系新規事業を推進。アクセンチュアベンチャーズ(CVC)日本副統括、アクセンチュアのシニア・アドバイザーなどを歴任後、現在、フェアリーデバイセズ株式会社 執行役員COO。東京工業大学を卒業、アクセンチュア在職中にインシアード(フランスのフォンテーヌブロー、シンガポール、アブダビにキャンパスを持つビジネススクール・経営大学院)でCorporate Executive Programを修了。

文=久池井淳 編集=石井節子

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