それから2年余りが経った1月28日、クアルトリクスはついにIPOを果たし、同社の共同創業者であるライアン・スミスは、ナスダックのオープニング・ベルを鳴らした。株価は、当日の午後2時にIPO価格の30ドルを40%以上も上回る41.85ドルをつけ、その後も上昇を続け、終値は45.50ドルだった。時価総額は200億ドルを突破した。
クアルトリクスを取り巻く環境は、2年前から大きく変わった。同社の内部でも、指揮体制に大きな変更があった。スミスが2016年にCOOにスカウトしたマイクロソフトの元幹部であるZig Serafinが、昨年7月にCEOに就任した。
2002年に兄ジャレドと父スコットと共にオンライン・アンケートツールを提供するクアルトリクスを立ち上げたスミスは、エグゼクティブ・チェアマンに就任した。スミスは最近、NBAのユタ・ジャズを買収してオーナーになった。スミスによると、SerafinはSAP傘下に入った直後からリーダーとして成果を挙げていたという。
スミスは、これまで以上に熱心にクアルトリクスの事業に取り組んでいるというが、リーダーが2人存在する体制は難しいという。「共同CEO体制を敷いた企業は他にもあるが、うまくいった例はない」とスミスは話す。
クアルトリクスの親会社であるSAPも共同CEO体制を終了し、現在はクリス・クラインが同社を率いている。SAPは、クアルトリクスのIPO後も同社の経営権を維持し、IPOで得た15.5億ドルは借入金の返済に充当するという。「2018年にクアルトリクスを買収した際には、一部から批判を受けたが、大きな利益を生むことができた」とクラインはCNBCとのインタビューで語った。
クアルトリクスの新CEOであるSerafinは、インタビューで次のように述べている。「我々は、SAPがM&Aによって成し遂げたかったこと以上の成果を挙げることができた。我々自身も、XM(エクスペリエンス・マネジメント)という分野の構築を加速できた」
Serafinによると、クアルトリクスはSAPの顧客にサービスを販売することができたため、目標を3〜4年前倒しで達成することができたという。今後は、SAPの顧客ベース以外の企業への販売も強化していく方針だ。
SAPの傘下でIPOすることは、シンプルではなかったようだ。テッククランチの報道によると、クアルトリクスは2019年に10億ドル近い損失を計上していたが、SAPによる株式報酬のコストがその大きな要因だという。また、クラインが沈黙期間中にクアルトリクスの業績に関するコメントをしたことを受け、同社はSEC(証券取引委員会)に書類の提出を求められた。