まずはマスクがどのように機能するのか、考えてみよう。鼻と、そして口を覆うものを何も着けていない場合、ウイルスに感染している人は呼吸するたびに、そのウイルスを含んだ飛沫を空中に吐き出している。そして、感染していない人は何も覆いがないことで、気づかないうちに感染する可能性がある。
マスクは1枚でも着けていれば、感染者が空気中に放出するウイルスの量を抑えることができる。そして、感染していない周囲の人を、感染から守ることができる。ウイルスが鼻や口から侵入することを、ある程度は防げるからだ。つまり、あなたにとっても周囲のすべての人たちにとっても、「鼻と口は覆っておいた方がいい」ということになる。
このときその「覆うもの」は、2枚あれば2倍良いということになるのだろうか? 理論的には、層は1つより2つの方が、確かにウイルスを通しにくくする。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部のモニカ・ガンディ教授(内科学)とバージニア工科大学のリンジー・C・マー教授(土木・環境工学科)はジャーナル「MED」に共同で投稿した論評のなかで、「サージカルマスクの上に布製のマスクをしっかりと重ねて着けることで、マスクの機能はさらに高まるだろう」と指摘している。
米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長もまた、2枚重ねることを支持している。先ごろ出演したテレビ番組の中で、物理的に覆いをする場合、層が1つより2つの方がより効果が高くなるというのは、共通の認識だろうと述べている。
ただ、一方でマスクについては、「呼吸」を考える必要もある。1枚で呼吸が妨げられることはまずないだろう。素材次第で、2枚でも問題はないと考えられる。だが、マスクを何枚も重ねて層が増えていけば、いずれは空気の通りが悪くなる。3枚、またはそれ以上、と重ねていけば、重さのためにかえって効果がなくなる可能性もある。最適な枚数を決めるのは、ろ過効率と呼吸のバランスであり、それはマスクの構造や素材によっても異なる。
もうひとつ問題となるのは、マスクがその人に合っているかどうか、ということだ。重ねて着用しているマスクのうち少なくとも1枚は、顔にぴったりとフィットしている必要がある。ウイルスが通り抜けてしまうため、顔とマスクの間に隙間があってはいけない。
2枚目のマスクは、もう1枚のマスクを顔にしっかりとフィットさせてくれるのに役立つと考えられる。だが、一方がもう1枚のマスクを外れやすくしてしまうなら、必ずしも重ね着けがいいとは言えない。
大半の場合において、マスクは1枚よりも2枚の方が、より私たちをウイルスから保護してくれるだろう。それによって守られるのは、周囲の人たちであり、そしてあなた自身だ。