GHSTSのデータによると、2014年以降、グローバルなイニシアチブを通じた医療保障関連の財政支援は、8万件近くに上っています。新型コロナ対策の取り組みに対する財政支援は、2020年9月時点で、全世界で456件がGHSTSに記録されています。2020年度の医療保障制度関連に確約された支援資金総額は、対前年度比11%増でした。
しかし、実際に拠出された支援資金は、2020年末までの支出予測の調整後でも、34%減と大幅に減少しました。以下の図1に示すとおり、確約された支援額と実際の拠出額の差は過去数年間で大きく広がってきました。これは、確約された拠出支援金の使用に隔たりがあることを意味しています。
図1:確約された拠出支援額と実際の拠出額の差が拡大している(イメージ:Global Health Security Tracking Site)
2020年、新型コロナウイルス感染拡大の抑制に関連するプロジェクトに確約された拠出支援額は225億ドルを超えましたが、これは、2020年に医療保障向けに割り当てられた確約された拠出支援総額の約30%を占めています。しかし、2020年の最初の8カ月間で実際に拠出された支援額は25億7000万ドル、つまり、拠出総額(189億ドル)の約12%に過ぎません(下図2参照)。契約拠出支援額と実際の拠出額の差を見ると、2020年末までに確約された拠出支援額が無事に拠出されないかもしれない、との疑念が生じます。
資金拠出の実態
パンデミックが続く中、世界的な支援が減少すると、資源が限られている国々での新型コロナウイルス感染拡大抑制に向けた取り組みが大幅に制限されます。
例えば、アフリカ諸国では、検査施設のキャパシティ不足により、十分な検査を実施できない状況が続いています。検査の不足に加えて、医療従事者不足と人工呼吸装置などの救命医療機器不足が重なった結果、この数カ月間で、世界で数十万人もの人々が命を落としたとも考えられます。さらに、多くの国がパンデミックの抑制に失敗しているため、2021年までに1億5000万人が極度の貧困ラインに陥り、2020年の全世界所得総額は3%減となると予想されています。これは、2020年1月に3%増となるとされていた当初予想を6%下回っています。
図2:2020年末までに支援残高が実際に拠出されるか、期待は持てない(イメージ:Global Health Security Tracking Site)
新型コロナウイルス対策への支援資金の大半は、国際機関(確約された支援額156億ドル)や高所得国(確約された支援額51億ドル)からのものです。世界銀行グループは、新型コロナウイルス対策への最大のドナーであり、途上国への対応として120億ドル以上の緊急資金拠出を発表しています。
日本は、世界銀行グループに次ぐ世界第2位のドナーであり、国際支援金16億ドルの大半を、世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染拡大対策のために拠出しています。欧州連合(EU)と国際復興開発銀行(IBRD)は共に第3位で、それぞれが15億ドルの拠出を契約しています。
このように、支援金が確約された状況にあるにも関わらず、新型コロナ対策関連案件への実際の拠出額はIBRDが5億2300万ドルと、世界第1位を占めていることが明らかになりました。次いで、第2位は英国の約4億ドルでした。