開発途上国に届かない支援金 コロナ禍の実態が明らかに

開発途上国ではパンデミックにより医療体制がさらに脆弱になっている(Getty Images)


資金拠出先と拠出目的の追跡データから、確約された支援資金の大部分が、「対応」に特化した活動向けのものであるということが分かりました。長期的な医療保障向上や医療人材・設備能力の構築を目的とした資金拠出は、一部に過ぎません。実際、拠出支援金の最大(123億ドル)の割り当て先は、「世界全般への支援」であり、主に世界銀行の緊急対応財源が占めていることが追跡データから明らかになっています。WHOは、確約された支援金の123億ドルの受益者で、金額は世界第2位です。

WHOの新型コロナ対策計画支援を目的として、WHOに割り当てられた支援金の主な拠出元は、日本、ドイツ、スウェーデン、EU、英国です。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)は15億ドルの受益者で、確約された支援金受益者としては世界第3位、インドは12億ドルで第4位です。実際に拠出された支援金の最大受益者はWHOで、その受益額は8億900万ドル、インドとCEPIの推定受益額は、それぞれ7億400万ドル、1億9200万ドルでした。

連帯なしに、早期収束は望めない


この世界的なパンデミックの中、世界の医療保障と対策システムを支援するための資金不足は大きな問題となっています。ドナーは、進行中の他のプロジェクトから資金を動員し、新型コロナウイルス感染拡大抑制プロジェクトを立ち上げており、このことは、新型コロナ対策関連の支援金は、長期的な医療人材・設備開発支援と、その他の重要な医療問題の対処に必要な資金から引き出されていることを示唆しています。

2020年には、エボラ出血熱関連の医療保障向けの確約された支援金が、対前年比で60%削減。コレラ関連への資金は20%削減されました。

世界的な医療保障の取り組みへの資金投入が滞れば、感染症への対応に長期間影響が及びます。現在進行している、あるいは将来的に起こる可能性のある感染症のアウトブレイクが起こってしまうと、今回と同様に世界中に深刻な損害を及ぼしかねません。

そのため、世界は、要支援国に十分な資金を割り当て、その国の既存の医療保障プロジェクトに影響を与えることなく、新型コロナウイルス感染拡大の抑制を支援しなければなりません。また、低中所得国の人々に、新型コロナワクチンを支給できるように、いまこそ、これまで以上に緊急出資が必要です。そうしなければ、新型コロナウイルス感染症は世界的な脅威として存在し続け、次のアウトブレイクへの予防力や対応力が阻害されて死者が増え、社会、経済の混迷を高める原因となるのです。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Yasser Omar Abdellatif, Senior Research Associate, Center for Global Health Science and Security at Georgetown University;Ellie Graeden, Associate Professor (Adjunct), Georgetown University

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