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ニューヨーク在住ジャーナリスト / NYC-based Journalist

ダグラス・ラシュコフ

ニューヨーク在住メディア理論家、ダグラス・ラシュコフ。著書『Team Human』(チーム・ヒューマン)で、テクノロジーに使われるのではなく、人間が主役になることの大切さを説いてから2年。邦訳版『人間のチームとして—企業でもなく 国家でもなく』(ボイジャー)の今春発売を前に、コロナ禍で加速するデジタル化や米国の分断などについて聞いた。

──コロナ禍で、テクノロジーと人間の関係は、どのような方向に変化したと思いますか。

早期段階では、テクノロジーが問題を解決してくれるという大きな希望を抱いていた。3Dプリンターで人工呼吸器の製造を試みるなど、人々は一生懸命だった。だから、インターネットが、コミュニティやパンデミックからの回復にひと役買うと思っていた。

だが、時間がたつにつれ、こう思い始めた。収束後、テック企業は私たちに自社のプラットフォームを何とかして使わせ続けようとするのではないかと。

一方、デジタルテクノロジー時代の早期から、テックの問題は認識されていた。(1985年創設の)マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボについて、心理学者のティモシー・リアリーは、男性研究者らが「子宮」を再現しようとしていると案じていた。外部との接触が不要で、ロボットなどが必要なものを提供してくれる自己完結型の閉鎖空間だ。

翻ってコロナ禍も、自宅という閉鎖空間の外は危険で恐ろしい「敵」ばかりだという意識を生んだ。

一方、ズーム漬けの生活が続くなか、10代のころ、父に喫煙を知られてしまったときのことを思い出す。父は私を呼びつけ、私が吐くまで何本もタバコを吸わせた。過剰なデジタル化も同じだ。コロナ禍が収束したら、人々はテックと距離を置くのではないか。

──「人間は社会的な存在であれ」と、あなたは言います。19年8月号の本誌インタビューでは、「週に10分でいいから、デバイスなしで人と話すことから始めよ」と語っています。リアルな交流が難しい中、「社会的」であるためにはどうすべきでしょう?

最近、ビデオよりも音声に傾倒している。私はメディア理論家だから、メディア論で知られるカナダの学者、マーシャル・マクルーハンの主張に立ち返るのだが、視覚や聴覚などの感覚には独自のメディア効果がある。音声は静止画より温かい感じがする。いま注目しているのは、「第2の『TikTok(ティックトック)』」ともいわれる音声型新SNSアプリ「Clubhouse(クラブハウス)」だ。

だが、感情に伴う顔面の高揚など、相手が発する「手がかり」はつかめない。バーチャルで話すと疲れ、心の「栄養」にならない。においや感触がないため、幸福物質のオキシトシンが脳から分泌されず、ラポール(親密な人間関係)を築けない。

──米大統領選では、根拠のない大規模不正論がソーシャルメディアを駆け巡り、有権者の断絶や分断が浮き彫りになりました。ソーシャルメディアというテクノロジーの進歩が民主主義に与えた影響は?

ソーシャルメディアは、構造的に空想世界のロールプレイさながらだ。好きなゲームを選び、物語を創作し、語り合い、演じる。右派も左派も小グループを作り、仲間内で、陰謀説など、独自の物語を共有し合い、独自の世界をつくり上げる。ソーシャルメディアが民主主義を破壊しているとは言わないが、そうした場を提供しているのは確かだ。

インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=山崎正夫

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