アフリカ大陸自由貿易圏が始動 巨大な可能性と克服すべき壁

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AfCFTAのメンバー国のうち、ナイジェリア、南アフリカ、ケニアなどの開発が進んでいる国については、今後5年以内にタリフラインの90%に品目に対する関税を撤廃、残りの7%は10年以内に撤廃、3%は撤廃対象外としている。

後発開発途上国(Least Developed Countries, LDCs)については、10年以内に90%、13年以内に残り7%の関税撤廃とされている。さらに、エチオピア、マダガスカル、マラウィ、スーダン、ザンビア、ジンバブエの6国については90%の関税撤廃までの期間が15年と設定されている。

ウェビナーでは、AfCFTAは大企業だけが恩恵を受けるものでははく、女性、若者、SME(中小企業)への機会でもあり、その運用にあたってはこうしたターゲットを支援していく姿勢を見せた。具体的には、オンラインプラットフォームを整備し、多通貨決済の障壁を減らし、貿易金融サービスの整備などを強化するとのことだ。

アフリカには、すでにAUが承認する8つの地域経済共同体が存在する。主なものは、15カ国が加盟する4億人市場、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、5カ国が加盟する1.9億人市場、東アフリカ共同体(EAC)、15カ国が加盟する3.7億人市場、南部アフリカ開発共同体(SADC)である。AfCFTAの形成によって、アフリカ外の諸外国との交渉力の強化や、市場の拡大による規模の経済の実現で投資効率改善が期待される。

AfCFTA実行に向け克服すべき3つの課題


アフリカ輸出入銀行の主任エコノミスト兼調査・国際協力部長であるヒポライト・フォーファック(Hippolyte Fofack)は、ブルッキングス研究所からAfCFTA実現に向けた提言書を発表。克服すべき以下のいくつかの課題について言及している。

AfCFTAの実現には、貿易の活性化に向けた供給側の制約、インフラ不足、そして関税以外の制約という少なくとも3つの制約を取り除く必要がある。供給サイドの制約の克服には、アフリカの多くの国がアフリカ外からの産品の輸入に頼っているという現状があるなか、アフリカ各国が産業化を進め、生産性を高めていく必要がある。

フォーファックは、とくに労働集約的な製造業と農業分野における重要性と可能性を指摘している。実現にあたっては労働生産性や企業が借り入れをしやすくするといった政策整備も必要である。
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文=MAKI NAKATA

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