アフリカ大陸自由貿易圏が始動 巨大な可能性と克服すべき壁

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しかし、政策整備が進んでも、アフリカ全土におけるインフラ不足は、自由貿易活性化の足かせとなる。提言書によると、インフラ不足の97%以上が、エネルギー、輸送、物流といった貿易促進に直接影響するものだ。その解決に向け、長期的な視野をもった大型投資案件は引き続き重要である一方で、工業団地や経済特区(SEZs)の設立が、産業化に向けた短期的な打開策として有効だ。現在、アフリカ38カ国でSEZsが設けられているが、その半数がケニア、ナイジェリア、エチオピアに集中しているという。

関税以外の制約とは、民間セクターへの投融資不足、ビジネス環境、そして通関などの実際の貿易業務に関連する諸手続きの煩雑さや連携のなさなどが挙げられる。こうした制約は、AUにおける既存の地域経済共同体における貿易が促進しきれていない要因の一つとなっている。

こうした制約の克服に加えて、投融資促進や多通貨取引の簡便化・低コスト化も重要だ。さらに、各国の関税撤廃に伴う歳入減少への対応、経済活動の繁栄の大前提となる平和構築・紛争防止・紛争解決も、AfCFTAが本格的に実働するために、各国政府が協力して取り組む必要がある。

AfCFTAのスコープではないが、AUでは「アジェンダ2063」の主要プロジェクトの一つとして、域内の人々がビザなしで往来できる共通「アフリカン・パスポート」の導入も挙げている。モノと資金の移動だけでなく、人の自由な移動も、アフリカの社会の安定化と経済活性化に向けて重要な要素となる。

今回のAfCFTAの運用開始は、汎アフリカとして諸外国と対峙していくというアフリカからの意思表明としての意味合いが大きく、自由貿易圏のメリットを最大化していくためには克服すべき多くの課題があるが、昨年6月には、AUが医療品Eコマースを開設するなど、Covid-19の影響で連携が強まり、共同プロジェクトが加速している動きも見られる。

植民地支配からの経済構造から脱し、グローバル経済に依存しすぎない「アフリカが望むアフリカ」として、アフリカ各国が連携を強化していけるか。引き続き、動向に注目していきたい。

文=MAKI NAKATA

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