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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

欧州で売り上げを伸ばす「キャッシュカイ」

2006年までは、欧州で日産といえば、「マーチ」(現地名:マイクラ)を思い浮かべる人が多かった。しかし、その年に登場したキャシュカイ(日本名:デュアリス)は日産のブランドイメーシを塗り替え、意外な大ヒットとなった。今回は、キャシュカイの成功の秘密に迫る。

ヨーロピアンに大受けした理由は、複雑そうで実は簡単。同車はSUVの実用性と、ハッチバックの効率の良さ(燃費の良さ)を見事にブレンドした初クロスオーバーだったのだ。実は21世紀当初、欧州市場の顧客によるテイストと趣味は変わろうとしていた。SUVというジャンルにだんだんと人気が出ていたけど、多くの顧客は販売されていたSUVより小さめの車両を求めていた。

ところで日産は当時、大きな危機感を持っていた。2002年に新型アルメーラ・セダンの開発計画が始動してはいたものの、十分な利益が見込めなかったため、同年末に計画が中止された。幸いちょうどこの時に、ビジョンを持つ商品企画部にひらめきが訪れた。より小さめのSUVと、欧州で大人気のハッチバックのそれぞれの利点や要素を融合させた新ジャンルが求められていたことに、日産の開発陣が気付いたのだ。そこで、2006年に初クロスオーバーのキャシュカイが生まれたわけだ。

カッシュカイの後ろから見た写真

ルックスは男性にも女性にも好かれること、ジャストサイズであること、機能性と走りが優れていること、そしてプライスがリーズナブルであることが成功の秘密だった。それだけ魅力的な車両なので、僕のイギリス人やイタリア人の友人も数人が購入した。「小型クロスオーバーの中で最も乗りたい1台です」とイギリス人がいうし、「格好良いし、サイズもぴったりだし、しかも走りがスムーズ。それに、コストも比較的安かった」というイタリアの友人が語ってくれた。

これらの要素はどのメーカーも必死に探している魔法のメニューだ。2006年に初代、2014年に2代目が登場し、そして2021年末までには3代目が発売開始となる。いうまでもなく、今もエクストレールなどのCプラットフォームを採用するこのキャシュカイが売れ続けている。2015年から2019年までは毎月の販売台数は22万台に達していたが、さすがにコロナ禍の2020年にはセールスは13万台に落ち込んだ。でも、今年はワクチンがついに摂取開始され、経済状況がいい方向に向くだろうということで、新型車の販売の目標は20万台以上の見込みだそうだ。ただ、イギリスは今、コロナに大打撃を受けているし、ブレグジットの影響でキャシュカイを作っている英国サンダーランド工場での生産がどうなるかは、いまいち読めない状況だ。

キャッシュカイの運転席

しかし、面白いことに、キャシュカイことデュアリスは日本では人気がなく、2014年に2代目が登場することなく日産は販売を終了させた。やはり、国によって、望まれるテイストや趣味が違う。欧州で大受けしても、日本にはノートとジュークとキックスがあるから、その結果、販売終了になったということだね。

ちなみにキャシュカイは、アメリカではさらに別の名称「ローグ・スポーツ」として販売されているけど、より大きめの日産ローグより販売台数が大きく下回るそうだ。やはり、アメリカ人にとって、同車は小さすぎるということだ。

キャッシュカイを横から見た写真

どのメーカーも、キャシュカイのような大ヒットを作ろうとしている。例えば、2008年には、トヨタは欧州でスマートのような超小型車で成功しようとして「iQ」を出したが、あまり受けなかった。ユーザーが本当にそういうクルマに乗りたがっているのかが決め手だ。

3代目キャシュカイは今年の春まで発表され、年内には発売開始となる予定だ。外観がよりスタイリッシュに変身し、日本で大受けしている「e-POWER」のハイブリッド技術を海外で初採用の新キャシュカイはさらなる成功は確実だろう。

連載:国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」
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文=ピーター ライオン

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