こう警鐘を鳴らしたのは、科学誌ネイチャー・エナジーに先日掲載されたオックスフォード大学の報告書だ。アフリカの大部分は再生可能エネルギー資源を豊富に抱えている。それにもかかわらず、アフリカでは2030年時点で石炭やガスのような化石燃料が電力生産の最大約3分の2をまかない、水力以外の再生可能エネルギー発電は全体10%以下になるだろう、と報告書の著者らは論じている。
研究者らは、アフリカ全土で計画されている2500ほどの発電所を機械学習を使って分析し、プロジェクトの成否を予測した。それによると、同大陸の発電容量は2030年までに236ギガワットから472ギガワットに増える可能性がある。そのうち、水力を含まない再生可能エネルギーで発電される電力はわずか9.6%だが、化石燃料は全発電容量の62%を占めるようになるだろうということが判明した。
欧州では、2030年までに少なくとも32%の電力を再生可能エネルギーで発電することが目標とされ、この達成はほぼ確実視されている。2020年前半に欧州連合(EU)で発電された電力のうち、再生可能エネルギーによるものは全体の40%を占め、化石燃料は34%だった。
アフリカだけではなく地球規模の課題も
研究者らは、アフリカ諸国は再生可能エネルギープロジェクト計画が比較的貧弱なことで、脱炭素化による経済・環境面のメリットを享受できないかもしれないと述べた。さらに、気候変動の世界的な課題として、世界の一部で二酸化炭素の排出量が削減されても他の場所で増加すれば、それが相殺され得ることも示されている。
報告書の主執筆者で、オックスフォード大学スミス企業環境大学院の研究者であるガリナ・アロバは「アフリカのエネルギー需要が増えていることにより、再生可能エネルギーを通して産業化と経済発展を進める独自の機会がもたらされている」と述べ、「そのためこの調査では、現在計画されている一連のプロジェクトを、支配的な化石燃料技術から再生可能エネルギーに移行させることが急務だという重要な指摘がされた」と続けた。
アロバはフォーブスの取材に対し、化石燃料発電への投資により「資産の座礁」の危険もあると指摘。資産の座礁とは、温室効果ガス排出量に今後高い価格がつけられることにより、化石燃料を使って発電した電気の価格が上がって投資が陳腐化することを指す。
「電力セクターができる限り早く再生可能エネルギーに移行することで、気候変動に関する将来の代償や資本の座礁が回避されるだろう」(アロバ)