二酸化炭素の排出量が下がらず、さらなる気候変動のリスクが生じることを避けるため、同報告書はアフリカ諸国が水力以外の再生可能エネルギー発電に移行することを推奨している。報告書によると、それには現在計画されている化石燃料発電所の建設を大規模に中止し、既存の発電所は早期に稼働終了させることが含まれている。著者らによると、これには官民両分野に加えて開発金融界の取り組みが必要だ。
研究の著者でスミス企業環境大学院の研究者であるフィリップ・トーターは「私たちのデータ主導の分析からは、アフリカで再生可能エネルギープロジェクトを実現させる可能性が上がり、化石燃料ではなく再生可能エネルギーの発電量を増やすことが計画されない限り、アフリカが再生可能エネルギー分野で急成長を遂げる可能性は低いことが示されている」と述べた。
多くの観測筋は、アフリカには日光など天然資源が豊富にあることから、再生可能エネルギーが同大陸で将来の経済・社会発展の鍵となる可能性を示唆してきた。そうなれば、アフリカはエネルギー面で自立を達成し、環境に優しい安価な電気を人々に提供できる。
エジプトやエチオピア、ケニア、モロッコ、南アフリカは再生可能エネルギー、中でも太陽光に多額の投資を行ってきた。一部の小国は高い脱炭素化の目標を掲げていて、ルワンダでは2030年までに再生可能エネルギーによる発電を全体の60%まで引き上げることを目指している。
しかし多くの政府は、発電容量を増やすことが強く求められていることを受け、エネルギー問題に対して短期的で高炭素な解決策を選んでいることが今回の報告書で指摘されている。持続可能なエネルギー供給を目指す長期的な視点がなければ、こうした国は近い将来、高額な電気料金を払いつつ他にも大きな代償を支払うことになるかもしれない。
こうした結末は、これまであまり気候変動に寄与してこなかった国がその大きな影響を被る「気候不正義」の典型例だ。ケニア・ナイロビのシンクタンク、パワー・シフト・アフリカ(Power Shift Africa)のモハメド・アドゥ所長の言葉を借りれば、「アフリカほど地球温暖化の原因を作ってこなかった大陸はないのに、アフリカほどその影響を受ける大陸は存在しない」のだ。