I study technology disruption in individuals, companies and societies.

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人工肉製造の分野ではこのところ成功事例が相次いでおり、そう遠くない将来、農場や輸送が不要で、動物を殺さなくても製造できる食品が市場に多数投入されるようになるだろう。

幹細胞から人工肉を製造する手法はまだ難しく、コストも高い。別の方法として登場したのが、バイオリアクターの中で本物のミルクに含まれるものと同じ分子構造を生成する方法だ。これにより、アイスクリームやチーズ、さらには母乳に至るまで、さまざまな乳製品を作り出すことができる。

サンフランシスコで2014年に創業したパーフェクト・デイ(Perfect Day)社は、「プロセスを変えつつ、食品自体は変えない」ことを目標とし、本物の乳牛からの搾乳に代わってトリコデルマ菌などの微生物叢を使ったバイオリアクター内での発酵によりカゼインや乳清などの乳タンパク質を生成する手法を開発。このタンパク質を使用して製造したヨーグルトやアイスクリームを、主にビーガン(完全菜食主義者)向けとして販売している。

またリミルク(Remilk)社も同じく、自社の製品は「牛乳の代用品」ではなく牛乳そのものであると主張。同社製品は牛乳と同じ分子構造を持ち、チーズの製造にも利用できる。同社は最近、1130万ドル(約11億8000万円)の資金調達を行った。同じくビーガンミルク企業のニュー・カルチャー(New Culture)は、合成カゼインを使い、風味や食感が本物と同じ乳製品を製造している。

味や香り、食感の好みは主に育ちや文化に根ざしているため、時間や世代を経る中で変化することは十分ありうる。現在企業が取り組んでいるのは特定の食品を完全に再現するものだが、私たちが新たな食感や風味に慣れていくことで、これも将来的には変わっていくだろう。

この手の食品の製造コストは現在のところ、通常の「自然な」食品(一般的な農場での飼育環境が「自然」と言えるのかは疑問だが)よりもかなり高いが、技術が進歩するにつれコストは下がるだろう。人工肉は歴史がまだ比較的に浅いものの、価格はすでに3万分の1も下落し、以前より多くの人の手に届くようになった。いわゆるラボラトリーフード(研究室で作られる人工食品)のコストは、技術的な障壁がなくなるに従い、間違いなく下がり続けるだろう。

唯一の問題は、果たしてどれだけの人が変化について行けるかだ。将来、私たちが口にする食品のうち、研究室での細胞増殖や分子合成によって作られたものはどれだけの割合になるだろう?

編集=遠藤宗生

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