イスラエルの新型コロナワクチン接種の初期データが示すこと

Photo by William Campbell/Getty Images

イスラエルの医療サービス大手クラリット・リサーチ・インスティテュートは先ごろ、同国が急ピッチで接種を進めている新型コロナウイルスのワクチンの効果に関する初期データを公表した。

世界で最も早いスピードで接種を行っているイスラエルは、人口100人あたり累計接種回数がすでに約43回となっている。

発表されたデータによると、2回の接種が必要とされている米ファイザーと独ビオンテックが開発したワクチンは、初回の接種での有効性は約30%とみられる。ファイザーは以前、この数値はおよそ50%との見方を示していた。だが、同社によれば、2回目の接種後には、ワクチンによる発病(発症)の予防効果は90%を超えるとされている。

ここで注意しておきたいのは、感染と発病の違いだ。ワクチン接種は感染した場合の発病を抑えるものであり、必ずしも感染そのものを防ぐわけではない。感染すれば、他の人を感染させる可能性もある。

感染後に他の人にうつす感染性がワクチン接種によってどの程度抑えられるかを把握するためには、より多くのデータが必要だ。また、クラリットが発表した研究結果は査読が行われておらず、接種がもたらす効果について結論を示すものではない。

クラリットによると、60歳以上のワクチン接種を受けた20万人と受けていない20万人の2つのグループを比較したところ、明らかになったのは次のようなことだ。
「初回の接種から5日目と12日目には、接種したグループとそうでないグループの感染率に差はなかった」

「接種したグループの感染率は、初回の接種から14日目以降に低下。17日後の感染率は、60~80%に低下した」

接種を受けた人たちの感染性については、データは限定的であるものの、低下していると推測できるという。ワクチンによって中和抗体が誘導されれば、接種した人は感染した場合でも、接種していない人に比べ、ウイルス量がはるかに少なく抑えられることになる。つまり、接種を受けていない人が感染した場合に比べ、他人にうつす危険性は低くなると考えられる。

ワクチンが感染ではなく、感染後に発病する可能性を抑えるためのものであることは、例えばインフルエンザウイルスなど、ほかの呼吸器系ウイルスのワクチンでも同様だ。インフルエンザワクチンは、接種した人の40〜60%が発病するとされている。

ワクチンに発病ではなく感染を予防する効果があるか明らかにすることは、より困難だとされている。そして、新型コロナウイルスについては、変異株の発生も問題を難しくしている。

感染性がさらに高いとされる変異株は、すでに確認されていた従来型の新型コロナウイルスに感染した人でも、感染する可能性がある。中国の重慶市で行われた血清の調査によれば、「武漢型」新型コロナウイルスに感染した人の血清には、イギリスで確認された「B.1.1.7」、南アフリカで検出された「B.1.351」のどちらの変異株に対しても、感染を予防する効果がほとんどないとみられている。

いずれにしても、必要なのはより多くのデータだ。より多くの国がより多くの人にワクチンを接種していくなかで、有効性や感染性に対する効果といったさまざまな重要な情報が、明らかにされていくことになるだろう。

編集=木内涼子

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