防災に越境するアウトドアの技術。「不便を楽しむ」新しい価値の原石

アウトドアの持つ多様な価値。不便を楽しむ魅力は防災にも転用できる発想だ。


アウトドアは「不便」を楽しむもの


そもそもアウトドアとは、「不便」であるもの。豊かで便利な暮らしが発達する一方でアウトドア需要が増しているのは逆説的とも言える。

語る小池氏

「多少の悪条件があるからこそ楽しめる。いい車がたくさんあるのに、バイクに乗ったりミッション車に乗ったりするのと同じで、それは楽しいから、ですよね。不便さを楽しんで、それが本当の楽しみになっている人は、完全にアウトドアが溶け込んでいると思います。防災の観点から言うと、パイオニアやリーダーになり得る存在では」(小池)

FIELDSTYLEに出展する約400の出展者たちは、まさに「不便」を楽しむプロと言える。例えば山登りでは、荷物や距離を逆算し、最新技術を駆使して「不便」を攻略していく。キャンプ飯と呼ばれる料理の楽しみ方も多彩になってきた。様々な角度から、「不便」を楽しむコツを学ぶことができる。

ワーケーションでも使えるポータブル電源


FIELDSTYLEに出展したラチタは、ポータブル電源商品「エナーボックス」を展開している。ポータブル電源は、2021年のトレンドランキングの上位30にも入ってくる。アウトドアとしての活用はもちろんのこと、防災としての購入も増えていると、ラチタの加藤真平は解説する。購入者アンケートによると、アウトドア2割、防災2割に対して、両方を意識して購入した人が6割になると言う。

ポータブル電源と水筒

災害時のポータブル電源活用を想像すると、スマートフォン充電から災害情報が得られたり、冷蔵庫や炊飯器といった家電にも活用できる。また、電気ケトルがあれば温かい飲み物も得られる。何かと不安に駆られる有事に電気の確保は安心をもたらすのだ。電気がないことでのちょっとした我慢が積み重なると、いずれ大きなストレスになることも。

いま、ワーケーションを掲げるキャンプ施設での貸し出しや、家でのリモートワークに限界を感じた人の公園・車での電源利用として活用されているという。働き方の多様化の影には、汎用性の高いポータブル電源の活躍があるようだ。エナーボックスは片手でも持ちやすいコンパクトサイズながら、444Whの大容量。様々なアプリを立ち上げる必要があるノートPCでも満足な容量となっている。

キャンパースキルの真髄は「調整力」


キャンプ初心者の中には、大掛かりなテントに苦戦したり食材の調理に時間がかかったりと、張り切りすぎて疲れた経験のある方もいるのでは。しかし、ヘビーキャンパーを見渡してみると優雅に過ごしているように見える。その違いは「調整力」だと加藤は指摘する。

笑顔で語る加藤氏

「キャンプ初心者が疲れる理由は、段取りが悪いから。慣れてくると、余裕が違います。ヘビーキャンパーなんてものすごくゆったりしていますよ。ずっと寝ているんじゃないかと思うくらい。でも準備はしている。同じようにテントを張って同じようにテーブルを用意して同じようにシュラフで寝ています。余裕があるのは、作業毎の工数が読めていて、調整が上手だからです」(加藤)

災害時も日常全てをいきなり取り戻すのは難しい。優先順位をつけ、「不便」も楽しみながら段取り良く生活していく。キャンプスキルの獲得は、災害時のストレス軽減にも役立ちそうだ。

文=齋藤優里花 編集=上沼祐樹

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