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イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(Photo by Dan Kitwood/Getty Images)

2008年以来、量的緩和(QE)はアメリカやイギリスの金融政策の「主役」となってきた。調整が加えられたり一時終了したりしながらも、今日も続けられており、日本やスイスなどほかの国々の中央銀行も似たような政策を採用している。

だが、最近の研究では、量的緩和がもたらした主な結果は株価の押し上げで、実体経済には必ずしも効果が出ていないことが示唆されている。そのとおりだとすれば問題だ。中央銀行の当局者たちは基本的に失業や経済成長、インフレといった指標を量的緩和のターゲットにしているわけだが、その向上につながっていないばかりか、不用意にも資産バブルを招いていた可能性があるからだ。

英レディング大学と同大学ヘンリービジネススクールの研究チームは「Did Quantitative Easing only inflate stock prices?(量的緩和は株価を上昇させただけだったのか)」と題する論文で、中央銀行による量的緩和政策の効果を分析している。分析は、イギリスとアメリカによる近年の量的緩和の経験を捕捉するために構築した経済モデルを通じて行った。

言うまでもなく金融政策の効果測定は複雑だが、今では各国のデータが少なくとも10年分あるので、測定は多少しやすくなっている。この研究では、量的緩和によって雇用は改善した可能性があるものの、それ以外は実体経済にほとんど寄与していないことが判明した。また、量的緩和によって株価が押し上げられただけでなく、株式市場のボラティリティ(変動率)は抑えられ、流動性が向上した可能性があることもわかった。

量的緩和が株価のバブルを生み出しているのだとすれば、そのバブルは非常に長く続いていることになる。たとえば英紙ガーディアンは2014年の記事で、経済成長は鈍いのにバリエーション(株価評価)は過剰に高いと指摘している。それ以降、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によってボラティリティが激しくなった時期があったにもかかわらず、バブルは弾けていない。

研究チームは、量的緩和のターゲットが確実に実体経済になるようにするために、もっとできることがあると論じている。中央銀行がバランスシートを大幅に拡大し、株価押し上げだけでなく、実体経済の改善に寄与するような事業に資金が向かうようにすれば、量的緩和はもっと役に立つものになるかもしれない。もちろん、実体経済の改善に株価の上昇がともなえばさらに良いだろうが、それは研究チームの結論ではない。

ただ、論文で使われているような経済モデルには難点もある。相関関係と因果関係は違うし、量的緩和の効果については歴史的な視点をとれるようになってきているとはいえ、それがまだ終わっていない以上、全体像はつかめていないからだ。量的緩和の全体的な効果を見極められるようになるのは、量的緩和が終わってからのことになるだろう。

いずれにせよ、量的緩和は当面終わりそうにない。経済に対する影響にはさまざまな要因がかかわっているが、量的緩和が近年の株価騰勢の一因になっているのは確かなようである。

編集=江戸伸禎

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