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開催か、中止か──。

あえて開催の是非自体を直接的に問うのではなく、「開催ならば、どんな東京オリ・パラにするべきか」をともに考えることにした。

東京五輪を通じて、改めてオリンピックやスポーツの未来を根本的に問い直し、改革の道筋をつけようと取材・発信を続けるスポーツライター・小林信也が、スポーツに造詣の深い慶応義塾大学商学部教授・中島隆信に、経済学の立場から東京オリンピックの現状と未来への展望を聞いた。

中島は、『大相撲の経済学』『高校野球の経済学』(ともに東洋経済新報社刊)など多数の著書で知られ、日本相撲協会「ガバナンスの整備に関する独立委員会」の副座長、高野連の「投手の障害予防に関する有識者会議」の座長も務めた経験の持ち主だ。


経済学者はオリンピックをどう見ているか?


小林信也(以下、小林):開催に向けて準備が進められているオリンピックの現状をどうご覧になっていますか?

中島隆信(以下、中島):オリンピックは、経済的に自立できないスポーツが息をつなぐための祭典だと思っていますので(笑)、野球やゴルフ、テニスといった自立しているスポーツは、オリンピック競技である必要は本来ありません。コロナ禍によって、本質があぶりだされているように感じます。

小林
:一年延期を決めた後、さらに「簡素化」に舵を切りました。これは奇しくも、東京五輪だけでなく、商業主義によって肥大化し、行き過ぎてしまったオリンピックを大きく改革する動きにつながっています。

中島:これだけ巨大化すると、大都市を持つアメリカなどの経済大国でないと、オリンピックの開催地にはなれません。ところが、テロの懸念に加えて、コロナウイルスのような脅威が現実的になったら、現在のオリンピックのような大規模イベントは難しいでしょう。

小林:競技数の見直しも当然、課題となる。私は取材で「オリンピックは陸上、水泳、レスリングといった、長く五輪にあった競技だけに戻したらいい」と言う声をたくさん聞きます。

中島:経済学的に見れば、「コスト・ベネフィットの見合い」なんです。コストに応じたベネフィットがあるか。そのバランスの取れないものは自然に淘汰されます。分散してやるなら、野球やサッカー、ゴルフやテニスなどの人気スポーツは、オリンピックの中でやる必要がない。残るのは客を呼べない競技です。そうなれば、採算が採れなくなる。

小林:そういう危機感があって、IOCはテニス、ゴルフといった世界的な人気競技を改めて五輪種目に採用した。そしてさらにスノーボードやスポーツクライミングといった若者に人気の高い、いわゆるアーバンスポーツも取り込みました。五輪全体としては「商売になる体制」を整えたようでも、あまりお客さんの呼べない競技は埋没していく。切り捨てられるかもしれません。

中島:例えば重量挙げのような競技は、4年に1度、オリンピックの舞台で注目を浴びる。それで競技自体の存続が成り立っています。

小林:オリンピックから外れたら、深刻な打撃を受ける可能性がある。

構成=小林信也 編集=宇藤智子 

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