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大規模イベントは「分散型」に変革しないと生き残れない


小林:先ほど、「コロナ禍で本質があぶりだされている」と言われました。オリンピックはこれからどうなるでしょう? スポーツの祭典として持続していく道は?

中島:ここまで肥大化したオリンピックは採算が取れなくなるでしょう。元々オリンピックは国でなく都市で開催するものでしたが、これからはもっと広い地域でやらないと無理ですね。1ヵ所で同時に開催するやり方でなく、分散型にならざるをえないでしょう。

小林:私は30年以上前から、エリートだけのオリンピックでなく、全員参加型のスポーツ・フェスティバルを提唱しています。

ネットを活用して世界中のスポーツ愛好家が自分の記録をネットに登録する。例えば、100mの記録を測って登録すると、年齢別の世界ランキングがたちどころにわかる。いつも近い位置にいる海外の人にメールを送ったり、機会があれば世界のどこかで落ち合ったりして一緒に走ることもできる。日常的にスポーツを通じたコミュニケーションできたら本当の意味で平和の礎になるという発想です。

中島:それは賛成です。面白いアイデアだと思います。

小林:オリンピック・ビジネスはいま、エリートたちの競技を大勢の観客や視聴者が見ることを前提に成り立っています。そうではなくて、世界中の人々がアスリートになり、彼らの移動や交流そのものが経済効果を生むでしょう。

オリンピック・イヤーには開催国で一年中、参加型のスポーツイベントが開催され、例えば卓球を愛する人は自分が参加できる年齢レベルの大会がある時期に必ず開催国を訪れるし訪れたいと思う。年に約2週間だけ、しかも大半の人にとっては見るだけのオリンピックより、ずっと活気がある、スポーツツーリズムの観点からも可能性が高いと思うのです。


4 PM production / Shutterstock.com

スポーツビジネスによって「心を支配されている」現実に気づかない


小林:感動をビジネスにする、それをパターン化した時点で「怪しい」と私は感じます。感動は人それぞれ自然に湧きあがるものだし、ビジネスの都合で誘導されるのは不愉快です。でも、メディアの騒ぎ方、アナウンサーの叫び声を聞くと、意図的に見る者を煽っているのは明らかです。

中島:このように人の心に働きかけ、行動を誘発することを行動経済学では「ナッジ」と言います。例えばプロ野球チームが地元ファンを獲得するため、小学校の授業で球団の歴史など教えるのは、洗脳に近いものがあります。ビジネス的には、こうした心理を巧みに操り、収益を上げることが戦略として行われます。

小林:それは「美談」としてニュースでさかんに取り上げられました。すごいな、市をあげて盛り上げているんだと多くの人が感心し、尊敬の念を抱いたと思います。でも見方を変えれば、子どものころから心に植え付ける洗脳的なアプローチなんですね。それが政治思想や宗教だと問題視されるけど、スポーツでそれをやっても多くの人が警戒しない。一種の盲点ですね。

中島:その場の雰囲気を作って、人を取り込んでしまう。一度取り込めば宗教のようなもので、離れない。本人は、自発的に選んで行動していると思うのですが、実際には操られている。

小林:スポーツはその絶好の舞台になります。

中島:ファンは、自分の自由意志に基づいて行動していると思っていますが、巧みな働きかけが行われているのです。

小林:“郷土愛”、“チーム愛”、“ニッポンがんばれ!”。全部つながっていますね。オリンピックにもそういう危険が潜んでいるわけですね。

中島:人は「興奮したい」という欲求を持っています。スポーツ新聞などもいい例ですね。前日の結果がもうわかっているのに、好きなチームや選手の勝利を読みたい。読んで、もう一度感動したい、興奮したいからです。それがスポーツ新聞というビジネスを支えています。

構成=小林信也 編集=宇藤智子 

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