フォーブス ジャパン編集部 編集者


投資戦略については、変化していない。ただ、このSaaSの流れが、一過性の流れではなく、50年、100年続くという、長期的な時間軸で考えるようになった。

Sansan、freee、ユーザベースなど上場後に成長する企業が増えたこともあり、上場後の戦略も含めて考え始めている。具体的には、長く、100年続く企業を作っていきましょうよというスタンスになっている。投資対象も、短期的よりは長期的なサイクルを求めて投資している。

ひとつの基準は、「業界のインフラ」になるか。50年、100年後もなくならない、市場や関与している人口が多い業界、業種で、インフラになれるポジションとなる会社だ。わかりやすい事例は、建設業向け施工管理サービスを手がけるアンドパッドだ。まだまだ、物流や医療などDXが行き渡っていない業界が多いので、この投資方針は変わらない。

海外調達へ クロスボーダーCFO・経営陣構築

──Coral Capital 共同創業者兼CEO ジェームズ・ライニー

クラウド、SaaS領域はバズワード化している印象だ。我々は同領域に対して、早くから投資をしてきた。ただ、SaaSはビジネスモデルに過ぎない。投資機会があると感じているのは、レガシー領域の課題解決であり、手段は必ずしもSaaSに限らない。業界・業種の課題に対してソリューションがあり、マネタイズできるのか、を思考した結果、SaaSが最適だという結論があることが重要だ。

投資家から同領域に注目が集まりやすい背景には、KPI(重要業績指標)やユニットエコノミクス(顧客1人あたりの収益性)といった数値による評価のわかりやすさがある。このわかりやすさが、海外投資家が注目し、日本のSaaSスタートアップに投資をする事例につながっている。20年にセコイア・チャイナから資金調達をしたアンドパッドなどだ。

事例が出ることで、海外からの資金調達を念頭に入れた、クロスボーダーでCFOができる人材を始めとした、「経営陣」構築への意識が高まっている。シリーズA、シリーズB段階から海外調達を念頭に置いた経営陣をしている企業も出始めている。

また、企業体としても、(東証マザーズ上場が目標から)評価額1000億円以上の企業体へと目標が変わった企業が多くなったこともあり、そのための経営陣や組織のガバナンス、ダイバーシティに関する議論が増えたことも特徴だと言えるだろう。こうしたトレンドは次世代のスタートアップへの好影響につながっている。

今年、注目している事業領域は、レガシー領域とDeep Tech領域。最近のメイン投資領域であるレガシー領域は、EC事業者の出荷作業向けソフトのロジレスのように、SaaS製品だが、それだけに止まらない企業だ。Deep Tech領域は、今年に入って投資した、核融合炉の主要装置開発の京都フュージョニアリングのような企業だ。

我々は、トレンドではなく、オポチュニティを探している。クラウド、SaaS領域を見るというよりは、レガシー領域のこの業界のこのポイントが日本にはまだないという視点だ。SmartHRや行政手続をオンライン化するグラファーへ投資した視点は、これからも変わらない。

文=山本智之

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