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2021.01.29

ビジョン共有のためにコンセプトを「凍結」「解凍」する|L&Gグローバルビジネス 龍崎翔子#2

L&Gグローバルビジネス 龍崎翔子

龍崎翔子氏が19歳のときに母と二人で設立したL&Gグローバルビジネス。富良野のペンション経営からスタートした同社は、「ホテルという箱を通して新しいライフスタイルを提案する」コンセプトが人気を博し、4年の間に全国5軒のホテルを運営するまで成長している。そんな龍崎氏が語る、経営者の素養、事業創造の秘訣とは。(3話中、第2話)(過去記事はこちら 第1話

*情報は2019年9月現在のものです。


常に自分の“長針”を1分進める


──コンセプトメイキングについてお聞かせください。コンセプトを作る上での龍崎さんの流儀はなんでしょうか?

3つあります。

1つめが、消費者が思う理想的な空間をインプットすることです。

当然、世界中の素敵なホテルの空間の写真はSNS等を介してインプットしています。ただ、すでに存在している空間を真似することに意味はないので、そこからインスピレーションを得ることはほとんどありません。

むしろ、自分を含むユーザーにとっての理想的な空間やモノをSNS等からインプットすることが多いです。ホテルに関係なく、Pinterest上に掲載されている誰かの部屋だとか、グラフィックだとか、そういったものをみて、インスピレーションを得ることが多いです。

2つめは「自分のためにホテルをつくる」ということ。適当に決めたペルソナではなく、自分がこんなホテルがあったら泊まりたい、というものをつくっています。

たとえば私が30代男性が好きそうなホテルをつくろうとしても、95%はリサーチでそれらしい商品がつくれたとして、満足度を高めるための最後の5%が詰められないと思うんです。どこまでいっても、嘘のペルソナなのです。

一方で、私に刺さるホテルを作れれば、共感する同世代が少なくとも10万人はいるだろうという感覚もあります。

「自分のために」作るコンセプトだからこそ嘘が全くないし、信じ切れるのです。

最後のポイントが「商いは飽きない」です。要は、つくったものが100点満点なわけがないのだから、常にアップデートしながらより高得点を求め続けるということです。

矛盾しているようですが、一回コンセプトを作ったら終わりではなく、より良いコンセプトを作るスタンスを持ち続けることが大切だと考えています。

──PDCAを続ける、とも言い換えられそうです。

PDCAとは少し感覚が違っていて、私の場合は単純に「あまのじゃく」なんだと思います(笑)。

「HOTEL SHE, OSAKA」で「ライフスタイルホテル」というコンセプトを掲げたときも、当時はそれが先鋭的だったのですが、次第にホテル業界セミナーなどでも「これからはライフスタイルホテルの時代です」と言われ、同じようなコンセプトのホテルが増えてきました。

そうなってきたときに、自己否定であることを承知の上で「ライフスタイルホテルなんてもうダサい」というスタンスを取るようになりました。

背景には、自己否定になろうとも、周囲の流れに逆行するスタイルこそが、イノベーションに繋がるはず という考え方があります。

そういった考えに基づき、周りの流れに惑わされることなく、自分の時計の長針を如何に1分進めていくか というマインドで動いています。
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文=村上 岳 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc.

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