ビジネス

2021.01.28

「ロマン4割、現実6割」でビジョンを現場に落とし込む|L&Gグローバルビジネス 龍崎翔子#1

L&Gグローバルビジネス 龍崎翔子


──ワンマン経営者というよりも、組織づくりに重きを置かれているのが印象的です。


これは素養の3つめである「自分の無力さを知る」ことにもつながりますが、私は自分のことを完璧だとは思いませんし、むしろ苦手なことが多いタイプだと認識しています。

でも、そうやって自分の無力さを知ると、他人の美点を知ることができます。そして一人ではできないようなことを、組織で補完しあって成し遂げることができるのです。

ワンマン経営者の率いる組織はその経営者以上の器にはなりませんが、メンバーの能力を最大限引き出す環境を作れれば、経営者の器を超えた組織になりえます。

「自分の無力さを知る」、すなわち、他人の美点を知り、認め、彼らが活躍できる環境を用意し、組織の力を最大化していくこと。この意識が経営者にとって重要なマインドだと考えています。

──若くして5つものホテルをプロデュースされています。それを可能にするご自身の強みはどう認識されていますか?


「ブランディング」と「マーケティング」という、普通は別の能力が必要と思われることを、どちらも自然に両立させているのが私たちの強みかなと思っています。

──具体的にはどのようなことでしょうか?

一例として湯河原にある「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」のコンセプトメイキングをしたときのお話をします。

「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」はもともと別の方が所有していた旅館で、ハード面の変更を一切せず、組織やコンセプト・商品開発といったソフト面の変更のみを条件に運営を引き継ぎました。

「マーケティング」の視点でマーケットを分析してみると、湯河原に来る観光客は60才以上で何回も来るようなヘビーユーザーがほとんど。新規の顧客、特に若い人が来ないというマーケットでした。

ここで普通のマーケッターが「湯河原の魅力をまだ知らない、20代30代の新規顧客をターゲットにしよう」となったら、いかにターゲット層に訴求するかを考える「PUSH型」思考になり、キャンペーンを矢継ぎ早にやるようなマーケティング施策を組み立てると思います。

しかし、私の場合「湯河原チルアウト」というキャッチコピーとイメージビジュアルを作成し、日本を代表する文人墨客に愛された湯河原の歴史への敬意をこめ、小説や漫画、雑誌をキュレーションして楽しんでいただけるような商品開発をし、SNSで発信をしていきました。

これにより、東京近郊で、歴史上の文豪のように、読書や仕事に集中できる場所といえば、The Ryokan Tokyo YUGAWARAであるというブランドが若者の間で成立するようになり、「PULL型」で集客できるような仕組みができたと考えています。

「ブランディング」と「マーケティング」それぞれに特化した人たちはたくさんいますが、両方をある程度のレベルでできて、収益性の高い事業モデルをつくれる。これは私たちの競争優位性であり強みだと思っています。


龍崎翔子◎1996年生まれ/東京大学在学中の2015年にL&G GLOBAL BUSINESS, Inc.を実母と二人で設立し、取締役・ホテルプロデューサーに就任。15年に「petit-hotel #MELON(北海道・富良野)」、16年に「HOTEL SHE, KYOTO」、17年に「HOTEL SHE, OSAKA」を開業。「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」「HOTEL KUMOI(北海道・層雲峡)」の運営も手がける。

連載:起業家たちの「頭の中」
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文=村上 岳 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc.

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